2015年07月08日
サマリー
◆欧米の機関投資家の間で、気候変動問題に関する動きが拡大している。背景には、気候変動対策が投資先企業の業績に影響を与えるリスク(カーボン・リスク)の認識がある。カーボン・プライシングの導入に伴い、温室効果ガス排出量は企業にとっては事業リスクに、機関投資家にとっては投資判断のファクターになりつつある。
◆企業の温室効果ガス排出量のデータは、どの程度開示されているのだろうか。本稿では気候変動問題に関する機関投資家の動きについて整理し、グローバル時価総額上位500社の開示状況を調査した。
◆調査の結果、1)温室効果ガス排出量(スコープ1、2013年度)の開示比率は全体で約7割であること、2)時価総額上位の企業ほど開示比率が高い傾向があること、3)先進国企業の開示比率は高く、新興国企業の開示比率は低い傾向があること、4)必ずしもカーボン・リスクが高い業種で開示が進んでいるわけではないことなどがわかった。
◆「2050年までに2010年比で40~70%削減」という大幅な温室効果ガス排出削減が求められるなかでは、特にカーボン・リスクが高いセクターにおける排出量の算定・開示は、リスク評価の観点から極めて重要である。適切なカーボン・リスク評価のために、温室効果ガス排出量の開示のグローバルな進展が期待される。
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