2015年06月23日
サマリー
◆我が国の地球温暖化対策としては排出削減策が最も重要だが、京都メカニズムクレジットと同様に経済と両立する実効性のある排出削減策を実施することは容易ではない。一方、自国の森林等を整備する吸収源対策は排出削減策を補完するものだが、一般に費用対効果が高く、多額の資金拠出を避けることができる効率的な対策とされている。
◆京都議定書の第一約束期間(2008~12年度、目標値▲6.0%(基準年総排出量比))では、排出削減策が景気変動や東日本大震災等の影響を受けて目標達成に直接、寄与しなかった(計画値▲0.6%、実績値+1.4%)が、森林吸収源対策は▲3.8%分の吸収量を獲得して高い寄与度を示した。第二約束期間(2013~20年度、2020年度目標値▲3.8%(05年度総排出量比))の初年度にあたる2013年度についても、森林吸収源対策は▲3.7%を獲得した。
◆UNFCCC第21回締約国会議(COP21)で採択予定の2021年度以降の新たな法的枠組みに向けて約束草案(政府原案)が公表された。我が国の2030年度における目標値▲26%(13年度比)のうち、吸収源対策で▲2.6%(森林吸収源対策で▲2.0%)相当を確保するとしており、引き続き有効な地球温暖化対策としての利用が計画されている。課題は、高齢級化している人工林の若返りによる吸収量の維持・拡大と、減少が続く林業労働力の確保等である。
◆森林吸収源対策の第一の目的はCO2吸収量の確保だが、森林がもたらす相乗便益(コベネフィット)を地域社会が有効活用できれば、経済成長と両立する実効性のある地球温暖化対策になる。政府は木材自給率の向上を政策目標に掲げており、森林吸収源対策を担う林業及び木材産業を、需要面から牽引する好循環が生まれる可能性がある。
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