2013年11月08日
サマリー
警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成するエコドライブ普及連絡会では、行楽シーズンであり自動車に乗る機会が多くなる11月を「エコドライブ推進月間」として広報活動を行っている(※1)。エコドライブのやり方として図表1のような「エコドライブ10のすすめ」を挙げている。この中で、運転の前に気をつけるべきことは、6、7、8、10であり、走行中に気をつけるべきことは、1、2、3、4、5、9である。全て実施すると相当の燃費改善(悪化防止)になるため、コスト削減効果の魅力は大きいだろう。
ただし、常時実施するのは難しいようである。2011年に行われた「エコドライブに関するアンケート調査(※2)」では、特に実施率が低い項目が1、3、7であった。認知率と常時実施率は必ずしも一致しておらず、常時実施率は2~6割と項目ごとにばらつきがあったことから、実践しやすいものと、そうでないものがあると分析している。
一方、先月開催された、高度交通システムの国際会議「第20回 ITS世界会議 東京2013」や、家電とITの国際展示会「CEATEC JAPAN 2013」で注目されたのが、自動運転である。自動運転は、カメラやセンサーなどを活用して自動車が自律走行するものと、信号や道路標識との情報(路車間通信)や自動車同士の情報(車車間通信)など外部の情報と協調して走行する協調運転がある。将来的には、自律かつ協調する自動運転になるともいわれ、トヨタ、日産、ホンダなどの自動車会社の他に、GoogleなどIT企業も実験している。こうした自動運転が実現すれば、空気抵抗を大きく低減できる車間距離を詰めた走行や、「エコドライブ10のすすめ」にあるような走行を常時実施できるようになるだろう。自動運転には、エコでコスト削減になるだけでなく、高齢者支援や安全性向上など、多様な効果も期待されている。
ただし、国土交通省の「オートパイロットシステムに関する検討会」が2013年10月に公表した中間とりまとめ(※3)では、「高速道路本線上(混雑時の最適走行を除く)における高度な運転支援システムによる連続走行」の実現を2020年代初頭頃までに目指す、という目標を掲げている。しばらくは運転者自身が、エコドライブをしなければならないだろう。
(※1)国土交通省 報道発表資料 平成25年10月31日 「11月はエコドライブ推進月間です!!~地球と財布にやさしいエコドライブを始めよう~」
環境省 報道発表資料 平成25年10月31日 「11月はエコドライブ推進月間です!! ~地球と財布にやさしいエコドライブを始めよう~ (お知らせ)」など。
(※2)一般社団法人 日本自動車工業会 「JAMAGAZINE」 2011年11月号 『乗用車のエコドライブは、どれだけ進んでいるか?』
(※3)国土交通省 「オートパイロットシステムに関する検討会」
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
生活費危機の時代に重要な「生活賃金」
多様なステークホルダーとの「賃金をめぐる対話」が企業の課題に
2025年09月18日
-
EUサステナ開示規制の域外適用見直しへ
米国とEUは関税合意の一部としてサステナ開示の域外適用を見直す
2025年09月12日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日