広がり始めた都市鉱山の活用
2013年07月11日
サマリー
小型家電リサイクル法の施行に伴い、都市鉱山の活用に向けた取り組みが広がり始めている。先ごろ環境省は、再資源化事業を実施する14事業者について、再資源化事業計画の認定を発表した(※1)。今回認定された14事業者により、41の都道府県がカバーされることになる。再資源化を円滑に進める上では、使用済小型家電を効率的に回収して、規模の経済を働かせることが重要になる一方、過疎地域等を含めた事業が競争上不利になることも懸念される。そのため、事業者の認定にあたっては、回収区域について「広域にわたる使用済小型電子機器等の収集に資するものとして主務省令で定める基準に適合すること(※2)」を求めている。具体的な広域の基準は、隣接する3以上の都府県の全域が原則となっており、人口密度が1平方kmあたり千人未満となるよう回収区域を設定することも求められる(※3)。
小型家電リサイクル法は、対象品目や回収方法等について、自治体の自由度が大きい点にも特徴がある。環境省が平成25年5月に実施したアンケート調査(※4)によれば、回答した市区町村の74.9%が小型家電リサイクル制度に参加中、または参加に前向きの意向を示しており、この比率は前回調査(平成24年11月:33.8%)と比較すると大きく増加している。回収の対象品目については、検討中(現在未定)とする回答も多いが、制度対象品目のすべて(またはほぼすべて)とする回答も1/4程度を占める。回収方法としては、公共施設などにおけるボックス回収、商品配送時などのピックアップ回収、清掃工場等への持込み回収などを挙げる自治体が多い。

先行して回収を実施している自治体では、想定を上回る回収実績を挙げる例もみられている。今年3月から回収を開始した相模原市(神奈川県)では、公共施設14箇所と家電量販店2店舗に回収ボックスを設置して、携帯電話、ビデオカメラ、CDプレーヤー等16品目の使用済小型家電を回収しており、5月には当初想定量(150kg/月)を大幅に上回る約1,400kgが回収されたという(※5)。小型家電には比較的軽量なものも多いため、消費者が回収ボックス等に持ち込むことにより、効率的な回収が可能であることを示唆する例といえよう。しかし、回収量全体の増加と比較すると、携帯電話等の回収量には伸び悩みもみられている。携帯電話については、既に販売店等を通じたリサイクルも実施されているため、既存のルートと競合していることや、「保存しておきたいデータがある」、「個人情報が漏れる心配がある」などの理由で、引き続き家庭内に退蔵されていることなどが考えられる。

家電リサイクル法の対象家電やパソコン、携帯電話等については、国内で回収・リサイクルが実施されている一方で、回収業者等を通じて海外に流出する部分も少なくないとみられている(※6)。今後、回収の対象範囲を家電製品全般に広げていく上では、排出しやすい仕組みをつくるとともに、適正な排出に対する消費者の理解を広げていく取り組みが重要になる。また、携帯電話やパソコンなどに含まれるデータを移動させたり、確実に消去したりすることは必ずしも容易ではないため、これらの作業が簡易に行える方法を提供することも必要かもしれない。人口減少や少子高齢化が本格化する社会では、使用者の死亡や住宅の二世帯化などに伴って、買い替えを伴わずに排出される家電製品等が増加する可能性もある。限られた資源の有効活用を広げていくためには、わかりやすく、利用しやすく、安心なリサイクルの仕組みに向け、消費者の視点で改善を続けていくことが求められよう。
(※1)「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律に基づく再資源化事業計画の認定について (お知らせ)」(平成25年6月28日:報道発表資料)環境省
(※2)使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)第10条第3項第2号
(※3)「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律施行規則」(第5条) 法令データ提供システム
北海道と沖縄県には特例が認められる。「隣接」には、海上架橋によってトラック輸送等が可能な地域を含む。
(※4)「小型家電リサイクル法に関する自治体アンケート調査結果について(お知らせ)」(平成25年6月28日:報道発表資料)環境省
(※5)「『使用済小型家電リサイクル事業』の実施状況について」(平成25年6月26日)相模原市
(※6)「使用済製品の現行回収スキーム及び回収状況」(産業構造審議会 環境部会 廃棄物・リサイクル小委員会(第20回配布資料)(平成24年3月30日)経済産業省
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