バーゼル法に基づく有害廃棄物等の輸出入の状況

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サマリー

有害な廃棄物等が国境を越えて移動し、人の健康被害や環境汚染を招くことを防止するため、1989年にバーゼル条約が採択され、1992年に発効した。日本においても、リサイクル可能な廃棄物を資源として輸出入していることから、1993年にバーゼル条約に加入し、条約を順守するため「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)」(※1)の制定など、必要な法的措置が講じられている。バーゼル法は、処分又はリサイクルを目的とした有害廃棄物の輸出入を行う場合の外為法に基づく経済産業大臣の輸出入の承認取得の義務づけ、これらの承認に際しての環境大臣の確認手続き、移動書類の携帯の義務づけ、不適正処理が行われた場合の回収・適正処分を命ずる措置命令等を規定している。また、毎年、バーゼル法に規定する特定有害廃棄物等の輸出及び輸入の実績が経済産業省と環境省より公表されている。そこで、2013年5月30日に発表された「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律の施行状況(平成24年)」(※2)をもとに、有害廃棄物等の輸出入の状況を紹介する。


図表1が、輸出の承認を得て実際に輸出が開始され、経済産業大臣が輸出移動書類を交付した特定有害廃棄物等の輸出量と輸出件数の推移である。直近の平成24年(1月から12月)の輸出量は120,466トンで、平成23年の88,211トンから36.6%増加した。また、輸出件数は852件で、平成23年の658件から29.5%増えた。輸出の対象物は、鉛スクラップ(鉛蓄電池)が輸出量全体の94.6%を占め、輸出件数でも89.7%を占めている。また、輸出の目的はすべてが金属回収となっている。輸出の相手国・地域は、韓国が輸出量の98.0%、輸出件数で94.1%を占めている。日本の特定有害廃棄物等の輸出は、ほとんどが金属回収を目的とした韓国への鉛スクラップ(鉛蓄電池)の輸出となっている。


輸出の推移をみると、平成14年頃までは輸出量が2千トン前後、輸出件数が50件程度の水準で推移していたが、その後は平成21年にかけて輸出量、輸出件数とも大幅に増加している。また、平成22年と23年の輸出はほぼ横ばいとなったが、平成24年には再び大幅な増加を示している。輸出が大きく増えた平成19年についてみると、金属回収を目的とする韓国への鉛スクラップ(鉛蓄電池)の輸出が増加している。前年の平成18年も同様の輸出がほとんどであったのだが、その量が増えたことで全体の輸出量が増えている。また、その後も輸出は同様のものがほとんどを占めるという状況が続いている。

図表1.特定有害廃棄物等の輸出量と輸出件数の推移
図表1.特定有害廃棄物等の輸出量と輸出件数の推移
(出所)経済産業省、環境省「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律の施行状況(平成24年)」より大和総研作成

図表2が、輸入の推移である。輸出と同様に経済産業大臣が輸入移動書類を交付した輸入と、輸入移動書類を交付せず移動毎に輸入承認を行っている台湾からの輸入を合計した数値を図示した。直近の平成24年の輸入量は9,633トンで、平成23年の5,300トンから81.8%増えている。また、輸入件数は181件で平成23年の145件から24.8%増えた。台湾からの輸入を除いた(※3)輸入量と件数について調べてみると、輸入の対象物は電子部品スクラップが輸入量の42.0%、銅スクラップが23.6%を占めている。また、輸入件数ではそれぞれ48.4%、16.6%を占めている。輸入の目的では金属回収が輸入量の99.5%、件数は96.8%とほとんどを占めている。台湾も含めて、輸入全体での相手国・地域の構成比を調べると、台湾が56.8%で輸入全体の過半を占めている。また、シンガポールが12.0%、香港が11.9%、フィリピンが8.6%を占めるなど、アジア地域からの輸入が多い。


輸入の推移をみると、平成8年と9年の水準が非常に高まっているなど、各年の輸入は水準の変動が大きいようである。また、平成20年から23年は緩やかな上昇が続いていたが、平成24年に急に大きく増えている。輸入が大きく増えた平成8年と9年について調べると、鉛の回収を目的とした鉛滓がオーストラリアから輸入された(平成8年6,500トン、9年6,500トン)ことの影響が大きかったようである。また、次いで輸入が増えた平成12年についてみると、ガラスの再生を目的としたガラスのくずをシンガポールから1,799トン輸入した影響が大きい。輸出とは違って、輸入に関しては多様な対象物がさまざまな国から輸入されており、大量の輸入案件があると、これが全体の輸入量に影響するという傾向がみられる。

図表2.特定有害廃棄物等の輸入量と輸入件数の推移
図表2.特定有害廃棄物等の輸入量と輸入件数の推移
(注)輸入移動書類を交付せず移動毎に輸入承認を行っている台湾からの輸入を含む
(出所)経済産業省、環境省「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律の施行状況(平成24年)」より大和総研作成

(※1)バーゼル法については、経済産業省のWebサイト「3R政策」内の「バーゼル条約・バーゼル法」や環境省のWebサイト「廃棄物・特定有害廃棄物等の輸出入」に各種の情報が掲載されている。
(※2)経済産業省「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律の施行状況(平成24年)をまとめました」(平成25年5月30日)
環境省「廃棄物等の輸出入の状況
(※3)台湾からの輸入に関しては、輸入移動書類を交付せず移動毎に輸入承認を行っており、輸入の対象物や目的等のデータが取得できなかった。

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