2013年05月17日
サマリー
我々の生活は、さまざまな化学物質から作られた製品を使用することで成り立っているといえよう。これら製品やその原材料を製造する際や廃棄物として処理する際には、さまざまな化学物質が大気、水、土壌などの環境に排出されている。そして、家庭などにおいて製品等を使用する際にも化学物質は環境中に排出されている。
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)制度は(※1)、化学物質排出把握管理促進法(化管法)に基づいて、事業者が化学物質の排出量や移動量を届け出たデータを把握し、集計し、公表する仕組みである。この制度では、業種、従業員数、対象化学物質の年間取扱量で一定の条件に合致する事業者が届け出を義務付けられている。また、届け出のあった排出量等に加えて、届け出の対象外である事業者、家庭、移動体(自動車、二輪車、特殊自動車、船舶、鉄道車両、航空機)からの化学物質の排出量の推計も行われており、これを届出外排出量と呼んでいる。事業者による届出外排出量は、届け出の対象業種に属するが他の条件に該当しないために届け出る必要のないもの(対象業種)、届け出の対象となっていない業種に属するもの(非対象業種)に分けて推計されている。
図表1が、平成25年2月28日に発表された「平成23年度PRTRデータの概要」(※2)による化学物質の届出外排出量を示したものである。届出外排出量は全体で255千トン、そのうち対象業種が46千トン、非対象業種は87千トンで、これら事業者からの排出が全体の52%を占めている。家庭は53千トンで全体の21%、移動体からの排出量は合計すると69千トンで全体の27%を占めている。移動体のなかでは自動車が55千トンとなっており、移動体からの排出量の80%を占めている。図中の「その他移動体」は、鉄道車両と航空機の排出量を合計したもので、これらの移動体はPRTR制度の対象となっている化学物質の排出の総量は少ない。
図表1.排出源別の届出外排出量

(出所)経済産業省、環境省「平成23年度PRTRデータの概要」より大和総研作成
我々の日常生活で、どのような化学物質が環境中に排出されているかをみるために、図表2に家庭と移動体による排出量の上位3物質をまとめた。まず、家庭からの排出は「ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル」が20千トン、「ジクロロベンゼン」が12千トン、「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩」が8.6千トンで、これら3物質で家庭からの排出量の77%を占めている。ジクロロベンゼンは、衣類の防虫剤やトイレの防臭剤などに用いられ、ほとんどが大気中に排出されている。他の2物質は洗剤などに用いられており、ほとんどが河川や海などへ排出されている。下水処理場や浄化槽などの排水処理設備が整っていない地域の家庭からの排出が多いようである。
移動体からの排出では、「トルエン」が26千トン、「キシレン」が16千トン、「ベンゼン」が7.2千トンとなっている。これらの物質はガソリンに含まれていることから、主に自動車の排気ガスの一部として大気中に排出されている。排気ガスに関しては、窒素酸化物(NOX)が大気汚染の原因としてよく知られ、また規制されているが、トルエンなどの化学物質も排出されているのである。
図表2.家庭と移動体から排出されている化学物質の上位3物質

(出所)経済産業省、環境省「平成23年度PRTRデータの概要」、環境省「化学物質ファクトシート 2012年版」より大和総研作成
このように、我々の日常生活からさまざまな化学物質が環境中に排出されている。もちろん、排出された化学物質は大気中や水中での拡散、光などによる分解等で濃度が低下することなどから、今すぐ何らかのリスクに直面しているとはいえまい。しかし、さまざまな化学物質による複合的な影響を含めて、多くの化学物資は人の健康や生態系への影響に関する科学的知見が十分ではないとされている。市民生活においても、環境中への化学物質の排出を意識し、排出量を減らす努力が求められるのではないだろうか。
(※1)PRTR制度については、経済産業省のWebサイト「PRTR制度」や環境省のWebサイト「PRTRインフォメーション広場」に各種の情報が掲載されている。
(※2)環境省「平成23年度PRTRデータの概要」
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