米国DC「自動加入化」の効果と今後の期待

若年層や低所得者層の加入率向上と資産形成の促進に有効な仕組み

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2025年10月07日

サマリー

◆米国の確定拠出型企業年金(DC)プランでは、2006年の年金保護法で規定されて以降、従業員の加入率を向上させるスキームとして「自動加入化」を導入する動きが広がっている。「自動加入化」は従業員本人が脱退の意思を表明しない限り自動的に加入する仕組みだ。これにデフォルトファンドの設定や拠出率の自動引き上げの機能も加えることで、従業員の加入率の向上と資産形成を促進する効果が見られている。

◆一方、課題もある。拠出率の自動引き上げを実施していないプランは少なくなく、初期の拠出率が低いと長期の資産形成が停滞する恐れがある。加えて中小規模プランでは「自動加入化」の導入があまり進んでおらず、従業員の加入率の低さが懸念される。

◆米国政府は、2022年成立の通称SECURE2.0法で一定の401(k)プランに拠出率自動引き上げの機能も含めた「自動加入化」の導入を義務化した。また、中小企業向けには、すでに2019年成立のSECURE法で企業年金制度の導入推進策を実施しており、「自動加入化」の義務化と合わせて普及拡大を促している。

◆近年、米国政府が対策を強化するのは、公的年金の機能が縮小する中、老後の所得確保として重要な企業年金に未加入の労働者が少なくなく、加入率の向上と資産形成の促進が喫緊の課題であるためだ。公的年金の補完としてDCの一層の普及が望まれる日本においても、近年の米国における政策対応を参考に、さらに踏み込んだ策として「自動加入化」の導入を検討すべき時期に来ているのではないか。

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