サマリー
ここ数年の家計金融資産残高は、株価等の変動を除けば横ばいに近い微増であった。金融資産残高を世帯主の年齢階級別に見ると、高齢者層で増加し若年層で横ばいないしは減少傾向にある。さらに、世代内での資産格差も拡大しているとみられ、60歳代の一部に偏在している可能性がある。
金融資産偏在の背景としては、所得そのものの減少、相続も長寿命化によって高齢者間で資産移転となっている可能性、所得再分配機能の限界が指摘できる。過剰な貯蓄が消費に回れば経済の活性化につながるため、「長生きリスク」に対応できる社会保障制度の再構築や、若年層への資産移転を促す政策が望まれるが、一朝一夕には成し難い。強制的な資産の再分配ができない以上、次善の策として、運用面で経済成長に貢献されるべきだろう。
家計金融資産の運用動向には、取引の短期化と流動性預金の増加という変化が起きている。手ごろな金融商品が不足していることと、短期取引の問題点の理解が必要だろう。日本の所得収支黒字をさらに拡大させ、高リターンを生み出す投資への誘導が必要となる。そのためには、金融・経済教育にも的を絞った対応が必要だろう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
高齢化がもたらす家計貯蓄率へのインパクト
高齢化により家計貯蓄率は低下傾向へ
2012年02月02日
-
日本の経常収支赤字化に備えて
米国は対外純債務国でも対外投資を積み上げて所得収支を拡大させた
2011年12月01日
-
家計の流動性預金増加の背景を探る
将来消費の備えと手頃な利回りを得られる投資対象の不足
2011年09月15日
同じカテゴリの最新レポート
-
米国DC「自動加入化」の効果と今後の期待
若年層や低所得者層の加入率向上と資産形成の促進に有効な仕組み
2025年10月07日
-
議決権行使における取締役兼務数基準の今後
ISSの意見募集結果:「投資家」は積極的だが、会社側には不満
2025年10月03日
-
大和のクリプトナビ No.4 ビットコインは「デジタル・ゴールド」か?
一定の妥当性はあるが脆弱性が残る。制度の整備や需要の多様化が鍵
2025年10月02日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日