家計金融資産の偏在と運用面の課題

『大和総研調査季報』 2012年新春号(Vol.5)掲載

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2012年04月02日

  • 土屋 貴裕

サマリー

ここ数年の家計金融資産残高は、株価等の変動を除けば横ばいに近い微増であった。金融資産残高を世帯主の年齢階級別に見ると、高齢者層で増加し若年層で横ばいないしは減少傾向にある。さらに、世代内での資産格差も拡大しているとみられ、60歳代の一部に偏在している可能性がある。

金融資産偏在の背景としては、所得そのものの減少、相続も長寿命化によって高齢者間で資産移転となっている可能性、所得再分配機能の限界が指摘できる。過剰な貯蓄が消費に回れば経済の活性化につながるため、「長生きリスク」に対応できる社会保障制度の再構築や、若年層への資産移転を促す政策が望まれるが、一朝一夕には成し難い。強制的な資産の再分配ができない以上、次善の策として、運用面で経済成長に貢献されるべきだろう。

家計金融資産の運用動向には、取引の短期化と流動性預金の増加という変化が起きている。手ごろな金融商品が不足していることと、短期取引の問題点の理解が必要だろう。日本の所得収支黒字をさらに拡大させ、高リターンを生み出す投資への誘導が必要となる。そのためには、金融・経済教育にも的を絞った対応が必要だろう。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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