中期経営計画の近時動向 <2023年7月>

「PBR1倍超え」コミットが象徴する質の変化

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  • コンサルティング企画部 主任コンサルタント 枝廣 龍人

サマリー

◆大和総研の集計では、国内上場企業による2023年1~6月の中期経営計画発表件数は386件であり、2年連続の減少となった。発表件数は新型コロナ感染拡大前の水準に戻りつつある一方、修正等の件数は高止まりの状態にあり、事業環境の不透明さを示唆している。

◆近年の中期経営計画のトレンドは、ESG/SDGsに代表される非財務情報の開示拡大と、ROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)に代表される資本収益性目標の導入拡大である。生命保険協会の調査では、ROICの経営目標導入比率はこの1年間で13%から18%に上昇した。

◆足もとでは、中期経営計画内でPBR(株価純資産倍率)1倍超えへのコミットメントを表明する企業が出てきている。これは東京証券取引所がプライム、スタンダード市場の上場企業向けに「資本コストや株価を意識した経営の実現」を要請したことが背景にある。中期経営計画はこの「資本コストや株価を意識した経営」に関する現状認識や方針の開示、およびそれに基づいた投資家との対話を進めるにあたって有用なツールであり、その重要性や社会的な価値は益々高まっていると筆者は考える。

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