ASEAN諸国の高成長が続いている。2010年の実質GDP成長率は7.9%(注)。インド(10.4%)、中国(10.3%)には及ばないものの、米国(2.8%)や欧州27ヵ国平均(1.8%、注)を大きく上回っている。
今後5年間についても、堅調な経済成長が期待されている。IMF(2011年5月時点)の見通しに拠れば、2016年までのASEAN諸国の実質成長率は年率平均5.5%。ラオス(7.6%)、ベトナム(7.1%)、カンボジア(6.6%)、ミャンマー(5.6%)と、所得水準が低いCLMV諸国の成長率が相対的に高いが、中所得水準のマレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンでも5%前後の成長が予想されている。
(注)2005年の名目GDPを基にした加重平均。IMF統計より大和総研推計
このような高い経済成長率を背景に、ASEAN諸国の所得水準も徐々に上昇している。1人あたりで見た2010年の所得水準は、ASEAN-4(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)の平均で3,454ドル、CLMV諸国で967ドルだったが、これが2016年にはそれぞれ5,448ドル、1,556ドルへと約1.6倍の水準にまで増加する見込みである。
図表1. 1人あたり所得水準の推移

以上の所得水準の増加に伴い、期待されるのが消費市場の拡大である。日本や韓国等の先進アジア諸国の経験がASEAN諸国にもあてはまるとすると、特に今後は各国で乗用車の普及が進む点が注目されよう。
現在と過去との貨幣価値の違いや、技術進歩に伴う乗用車の生産コストの低減、国内の道路インフラの整備状況、貧富格差による実質的な購買層の厚み等の違いから、各国を同列に比較できないが、日本や韓国、マレーシア等の経験からは1人あたり所得水準が3,000~5,000ドルに達すると、急速に乗用車の普及率が上昇することが知られている。
2010年のASEAN-4の1人あたり所得水準は、マレーシアの8,423ドルを筆頭に、タイ4,992ドル、インドネシア3,015ドル、フィリピン2,007ドルと続いている。既に乗用車の普及が30%(人口比)と進展しているマレーシアに続き、今後はタイとインドネシアで市場拡大が急速に進むと期待できる。
先般4月のASEAN地域の自動車販売台数(商用車含む)は若干の落ち込みを見せたが、これは3月の大震災で日本からの部品の調達が遅れ、主要メーカーが生産調整を行った影響が大きい。また、そもそも4月はASEAN最大の販売台数を誇るタイにとって季節的に販売指数が低い傾向にある。足下では既に主要メーカーの稼働率は回復基調にあり、今後は堅調な販売の回復が予想されている。何よりも強調したいのは、中期的に所得水準の上昇が予想されるASEAN諸国で、乗用車市場の拡大はまだ緒に就いたばかりである。自動車需要は力強い増加基調での推移が見込まれ、今後暫くASEAN自動車市場の動向からは目が離せない状況が続くだろう。
図表2. 乗用車の普及率と1人あたりの所得水準

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