「まち」の地方創生 最高路線価地点の変遷と街の構造変化

交通史観が中心市街地の再生策に示唆すること

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サマリー

◆1965年(昭和40年)から本年まで50年間の石巻市の路線価を調査した。最も高い場所が、北上川河岸の旧市街から石巻駅前、次いで石巻バイパスを経て高速道路の近辺に変遷している。同じように東北地方の都市について調べると、かつての中心市街地の地価凋落とともに、最高路線価地点が郊外に移転する傾向が見られた。中心地の変遷の背景には、徒歩・舟運から鉄道、次いで乗用車という主要交通手段の交代がある。中心地の場所と街のスタイルは主要交通手段に規定される。この仮説を本稿では「交通史観」と呼ぶ。


◆次に、都道府県庁の所在都市の最高路線価を1960年(昭和35年)に遡って調査した。郊外移転の事例はないものの、旧市街の地盤沈下を背景に駅前に移転する事例は多く見られた。東京や地方ブロックを代表する都市は2000年代半ばまでに地価の持ち直しの動きがあったが、それ以外では県庁所在都市を含め下落傾向を辿っており、都市間の階層構造が際立ってきている。


◆程度に幅はあるが多くの都市で街の中心の郊外移転の動きがみられる。そうした中、旧市街は、郊外にできた新たな中心の周辺鉄道と徒歩を主な交通手段とした、住むのに適した街という新たなポジションを得る。車社会以前の、遠くから買い物客が来街して賑わったかつての商業中心地の復活を目指すのではなく、駅徒歩圏内に中層住宅を増やし、住宅街としての充実を目指すのが街の発展法則に適っている。徒歩圏内に発展した城下町の街割りを立体化し現代風に再生する取組みとも言える。

大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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