アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)

「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか

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  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 吉川 英徳
  • コーポレート・アドバイザリー部 コンサルタント 山本 一輝
  • コーポレートバリュー・アドバイザリーチーム

サマリー

◆2024年6月株主総会シーズンの株主提案数は113社と過去最高を更新した。アクティビスト投資家等の機関投資家による株主提案数は59社と前年61社に引き続き高水準で推移している。これは前年同様に一部のアクティビスト投資家が活発に活動し、複数の投資先に対し株主提案を積極的に実施したことが背景にある。すなわち、日本市場でアクティビスト投資家の活動は引き続き高水準にあると言える。また、2025年6月株主総会シーズンに向けても、足元、アクティビスト投資家の活動は引き続き活発な状況にある。一部アクティビスト投資家は2024年7月~12月に書簡送付、株主提案等を公表しており、昨年以上に活発に動いている。

◆2024年においては、アクティビスト投資家によるM&Aアクティビズムも活発化している。非上場化等に伴うTOBへの介入だけでなく、非上場化の提案等もしている事例が見られる。一部のケースではスポンサーとなるPEファンドの斡旋や、自らがスポンサーとなって買収提案を仕掛けるケースもある。アクティビスト投資家の活動が経営リスクになりつつある。

◆2025年においても引き続きアクティビスト投資家の活動が高水準で続く見通しである。上場企業においては、アクティビスト投資家による企業価値向上に向けての聖域なき検討要求が強まる中、従来以上に企業価値向上に向けての説明責任が高まる。一方で、過度な要求に対しては毅然とした対応が必要になると考えられる。また、アクティビスト投資家の活性化が同意なき買収リスクを高める中、上場企業としてこうしたリスクにどのように向き合っていくのか今一度整理が必要になる。

◆株式市場の「弱肉強食化」が進むと、自社の経営力に自信があり、かつ株式市場から適正な評価を受けている企業が上場企業として残っていくことが考えられる。元々、株式市場に上場する意味は「株主からの資金調達の場」であったが、近年は「株主への資金還元の場」としての色合いが濃くなってきている。そのため、多くの上場企業にとって、株式市場に上場するメリットが相対的に薄れてきている。加えて昨今のアクティビスト投資家と同意なき買収リスクの高まりを受けて、変わりつつある「上場する意味」を踏まえ、その是非を検討する動きが加速すると予想される

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