2015年02月18日
サマリー
◆コンパクトな大会を標榜するものの、シドニー、ロンドン大会とは異なり東京大会では競技場その他関連施設が点在している。ついては、おおむね環状2号線に沿って、メイン会場の新国立競技場から国際新都心の虎ノ門近辺を経由し東京ビッグサイトに至る都市軸を引く。横軸に首都高湾岸線に沿って東京ベイゾーンを横断する都市軸を引くことで、点在する関連施設に面的な一体性が生じる。これに、高齢化や国際化などの世界共通の課題に沿ったあるべき都市の未来像を投影。具体的には「都心の中の郊外」となろう。まちづくりのビジョンを示すことで、施設の後利用や周辺開発にかかる民間のアイデアは豊かになり、収支計画も前向きになる。東京五輪を機に東京ベイゾーンの付加価値を高める効果も期待できる。
◆都市軸を明確にすることで、新規整備する有明アリーナ等が集積する有明近辺は国際新都心に連結するターミナル立地に転換する。この立地に相応しいのはまちづくりの拠点となる「劇場としての競技施設」である。さらに、その周辺に健康増進・余暇充実目的のサテライト施設を体系的に整備し、スポーツを健康寿命延伸に活かす戦略モデルの構築も一考。
◆もうひとつのコンセプトが体験型テーマパークとしての競技施設である。自然とスポーツを都心で体験し、自然豊かな地方で本格的なアウトドアスポーツに取り組む。このようなモデルを作ることで地方創生に貢献する。インバウンド観光客を東京から地方に回遊させる仕組みでもある。海の森にカジノを設置し東京ベイゾーン全体を統合型リゾート施設(IR)に見立てるのも一考だ。強力な集客装置になろう。
◆東京ベイゾーンのまちづくりを東京大会のレガシーのひとつとするならば、競技施設の後利用の目的は「社会教育」よりむしろ「集客装置」に近い。大会終了後の運営は、その前段階の企画から民間が積極的に関与したほうがよい。施設整備にあたっては修繕型のコンセッション方式PFI等の活用も有力な選択肢となる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
コロナ禍を踏まえた人口動向
出生動向と若年女性人口の移動から見た地方圏人口の今後
2024年03月28日
-
アフターコロナ時代のライブ・エンターテインメント/スポーツ業界のビジネス動向(2)
ライブ・エンタメ/スポーツ業界のビジネス動向調査結果
2023年04月06日
-
コロナ禍における人口移動動向
コロナ禍を経て、若年層の東京都一極集中は変化したか
2023年03月31日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
よく読まれているコンサルティングレポート
-
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日
-
退職給付会計における割引率の設定に関する実務対応について
~「重要性の判断」及び「期末における割引率の補正」における各アプローチの特徴~
2013年01月23日
-
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
-
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2024年9月版)
ステルス買収者とどう向き合うかが今後の課題
2024年09月13日
-
サントリーホールディングスに見る持株会社体制における株式上場のあり方について
2013年04月17日
アクティビスト投資家動向(2024年総括と2025年への示唆)
「弱肉強食化」する株式市場に対し、上場企業はどう向き合うか
2025年02月10日
退職給付会計における割引率の設定に関する実務対応について
~「重要性の判断」及び「期末における割引率の補正」における各アプローチの特徴~
2013年01月23日
中国の「上に政策あり、下に対策あり」現象をどう見るべきか
2010年11月01日
買収対応方針(買収防衛策)の近時動向(2024年9月版)
ステルス買収者とどう向き合うかが今後の課題
2024年09月13日
サントリーホールディングスに見る持株会社体制における株式上場のあり方について
2013年04月17日