2008年10月のいわゆるリーマン・ショック以降、世界的な株安傾向が実体経済にも影響しつつある中、M&Aにおいても大きな変化が見られる。
その変化とは、リーマン・ショック前までのTOBにおいては、TOBプレミアム(市場株価と買付価格との差)は一般に30%程度と言われていた。それが最近では100%近いプレミアムを付した買付価格も珍しくない。特に上限を設けず完全子会社化を目指す場合はそれが顕著である。今年の1月下旬に開始され3月半ばに完了した日立製作所の日立工機と日立国際電気に対するTOB(いずれも買付株数に上限あり)や、ファーストリテイリングのリンク・セオリー・ホールディングスに対するTOB(完全子会社化が目的)では、前日の終値に対して70%を超えるプレミアムが付された。また、電通がサイバー・コミュニケーションズに対して行ったTOB(完全子会社化が目的)では、実に(同)150%のプレミアムが付されていた(3月16日に終了)。
その一方で、それだけのプレミアムを乗せてもPBR(株価純資産倍率:株価/一株当たり純資産)が1倍を割り込んでいる例も少なくない。前出の日立製作所の日立国際電気に対するTOBにおいては、前日の終値に対して80%近いプレミアムが付されていたが、それでも一株当たり純資産額を下回っていた。特に今年に入ってからは、高いプレミアムを付していながら、買付価格が一株当たり純資産額を割り込むTOBも少なからずある。
自らの株価も低迷しているような場合、自社の株式を対価とする株式交換ではなく、「TOB(で100%近くまで買い集め)→現金を対価とする株式交換(で100%子会社化)」の方法を使った完全子会社化スキームが、増えていくのではないだろうか。TOBの資金が手当てできるのであれば、一定のキャッシュ・フローが得られる会社に対しては、有効な手段になると思われる。
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