サマリー
◆一般に、複数事業を持つ企業(コングロマリット企業)は、事業別評価の合計に比べて市場価値が低くなる傾向があるとされており、多角化は企業価値を毀損すると考えられている。
◆しかし、今回筆者らが日本の上場企業を対象とした定量分析をした結果、コングロマリット企業は「多角化ゆえに非効率である」との通説に反し、収益性において専業企業群と比べて必ずしも劣後していないことが確認された。
◆さらに、コングロマリット企業は付加価値率が高く、平均給与水準も専業企業群より約1割高い等、人的資本への分配が相対的に厚い。これは、株主価値と従業員還元が必ずしもトレードオフではなく、人材の定着や能力開発、挑戦行動の促進を通じて競争力強化につながる好循環が成立し得ることを示唆している。
◆一方で、コングロマリット企業は一人当たり売上高・営業利益で他社に劣後する傾向が見られ、これは間接部門や管理機能を含む人員構成の影響によるものと考えられる。
◆近年はROEやROICといった「率」の指標改善を意識する企業が増えているが、企業価値は最終的に絶対的な「額」で評価される。資本効率が資本コストを上回る局面では、資本規模を活かして成長領域へ投資できる点が、コングロマリット企業の強みとなり得る。
◆重要なのは多角化の是非そのものではなく、資源配分や人的資本投資が価値創出にどのように結びついているかを、ガバナンスと情報開示を通じて的確に可視化し、説明できるかどうかである。条件が整えば、コングロマリット化は企業価値向上策として再評価される余地がある。
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