製造業A社に対する営業改革コンサルティングでのこと。A社営業のこれまでの行動基準は、「お客様がこう言っているから・・・」。顧客が全て、という考え方は一面で真理だが、行き過ぎると顧客の要求に逐一対応する高コスト体質となり、本社の統制も利かなくなる。A社はこれを問題視し、行動基準を「自分たちは何を提供できるのか?」に変えようとした。すなわち、営業活動の基準を“自分たちが顧客に提供できる価値(=顧客価値)”主導とすることで、本社がコントロールできる秩序ある営業体制の確立を目指した。
社内の議論を通じて、自分たちが提供する「手厚いサポート」が他社にない強みであることが明らかになった。しかしここで改革はその歩みを止めた。A社はその“顧客価値”として、「手厚いサポート」を幅広い顧客に提供していくべきという結論に達してしまったのである。
何が問題なのだろうか?「自分たち」だけでなく、変わるものが他にもある。A社の営業はそれを見落としていた。それは顧客自身である。導入期から始まるライフサイクルという概念はご存知だろう。例えば、立上げ間もないベンチャー企業にとっては、様々な面での手厚いサポートが“顧客価値”となることは容易に想像できるが、顧客が成長期、成熟期へと進化すれば、専門能力やスピード、コストダウンなど、“顧客価値”もそれに応じて進化していくはずである。現在顧客が求めるものではなく、常に進化する顧客との関係を動態的に捉えることこそ、営業が担うべき最重要の役割なのではないか?
ちなみに、その後A社の営業担当は「手厚いサポートだけでは顧客の進化に対応できない。逆に手厚いサポートに強みがあるのなら、そういう(導入期~成長期にある)顧客をターゲットにするという考え方もあるのではないか」という議論を進めている。A社の営業は「顧客は進化する」ことに気付いたようだ。さて、貴社の営業はどうだろうか?
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
シリーズ 民間企業の農業参入を考える
第3回 生産基盤としての耕地(1)
2025年09月05日
-
シリーズ 民間企業の農業参入を考える
第2回 異業種参入:持続的成長をもたらす戦略とは
2025年03月11日
-
シリーズ 民間企業の農業参入を考える
第1回 我が国の農業を取り巻く環境と金融機関の農業参入
2024年11月18日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
-
IOSCOの2026年作業プログラム
グローバル化とデジタル技術の進化がもたらす構造的リスクに対処
2026年03月13日
-
財政安定化の条件:ドーマー条件成立だけでなく、PB黒字化が重要
財政シリーズレポート4
2026年03月13日
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
大和のクリプトナビ No.8 東証が暗号資産トレジャリー企業への対応を検討か
トレジャリー企業を巡る直近の動向と海外制度の整理
2026年03月12日
-
続・アクティビスト投資家進化論
~今後アクティビスト投資家に求められる「価値創造力」~
2026年03月13日

