地域・パブリック 経済・ビジネストピックス
建設費延払型PFIから経営委託型PFIへ

2011年9月7日

PFIとは、民間の活力を公共施設の整備・管理等に活かし、低コストで質の高い行政サービスを可能とするための手法である。PFIはじめ官民連携は、過酷な市場競争で揉まれたがゆえに獲得した民間企業の知恵と生命力を公営事業のアシスト動力として利用しようというものだ。具体的には公共施設に民間流のコスト意識とお客様第一主義が浸透することを期待している。さらに官が一方的に負っていた損失リスクを民にも分担させることができれば地方財政の改善にも一役買う。折しも大地震が起きた3月11日、コンセッション方式の導入を目玉とするPFI法改正案が閣議決定した。5月には衆議院本会議を通過し6月1日の公布に至る。財政難の折、PFI事業の拡大はもちろんのこと震災復興への貢献が期待されている。

建設費延払型PFI

これまで実施されたPFIは、公共施設を整備するのに借入を起さないですむ方法として使われてきたケースが多かったと思う。本稿ではこれを名付けて「建設費延払型PFI」と呼ぶ。改正PFI以前に典型的なタイプだ。どういったところにスキーム上の特徴があるか。まずPFI事業のイニシアティブは建設業者がもつ。プロジェクトを牽引する建設業者がPFI事業に出資し、額も一番大きい。建設業者が公共施設を出資金つきで受注し、ユーザーである地方公共団体から「サービス購入料」を毎期継続的に受け取ることで長期に回収するシステムである。

地方公共団体には2つのメリットがある。ひとつは、帳簿上借入を起さず公共施設を整備できることだ。ここでPFIは、地方公共団体が「サービス購入料」でもって建設費を延払いする仕組みとして機能する。もうひとつは、プロジェクトチームがPFI事業を包括的に請負うことで建設コストの抑制が期待できることだ。包括にもふたつの次元があり、まずは設計、施工から設備造作までひとまとめに請け負うこと。個々別々に調達手続をする手間とコストを省くことができる。次いで完成後も運営やメンテナンスまで公共施設の生涯にわたって請け負うこと。コストを平準化できるため、長い目でみればトータルコストの節約につながるということだ。

民間活用の本旨に照らしてみれば建設費延払型PFIのメリットは思うほど多くない。確かに施設整備に伴う起債は少なくてすむが、長期未払金という形での負債は残る。地方財政健全化法の施行によって、地方公共団体の借金は「地方債現在高」だけでなく諸々の支払リスクを含めた「将来負担」という概念で捉えられるようになった。財務指標を良く見せるメリットも薄まった。こうした経緯はファイナンスリースと重なって見える。

建設費延払型PFIにおける延払債務が、地方公共団体が発行する地方債の代替物とすると、当の延払債務には地方債と同レベルの信用力が求められる。かといって債務保証を与えるわけにはいかないので、他の方法で信用補完をはかる。たとえばPFIで整備した公共施設に買取保証をつける。万一のときには公共施設を地方公共団体が保証する価格で買ってくれるので、その価格内に融資残高がおさまっていれば債権者は取りはぐれることはない。

もっとも、これでは地方公共団体が事業リスクを無制限に負ったままになっているため、リスクを民間側に移転して公金支出を抑えるというPFI本来の機能は果たしていない。リスクに揉まれて育つ民間経営の知恵と生命力を活かすべくもない。建設費延払型PFIは、ファイナンスリースに通じる金融の手段、委託費の包括化による建設コスト削減の手段であり、民間経営の活用と直接の関係はないと考えたほうがむしろ理解しやすい。

PFIの機能別分類・・・経営委託型PFIと建設費延払型PFI

経営委託型PFI

それでは民間活力を活かすという意味でPFIはどのように機能するべきだったのか。筆者が官民連携の成功例としてしばしば挙げるのが新江ノ島水族館や、プロ野球の楽天イーグルスのホームグラウンドであるクリネックススタジアム宮城(県営宮城球場)の事例である。もっとも後者は都市公園法の管理委託制度を適用したものでPFIではない。とはいえ70億円かけて改修し、造作を県に寄付すると同時に向こう15年の「管理許可」を獲得した一連のフローはコンセッション制度を先取りしたかのようである。老朽化した野球場を格安コストで改修でき、球団はそれなりの収益を獲得できと、官民がwin-winの好例であり学ぶべきことは多い(※1)

公共施設に民間活力を活かすという意味で官と民のあるべき関係は「所有と経営」の役割分担である。ときに公共福祉の原理によって制御されなければならない場面もあろうが、「角を矯めて牛を殺す」になってもいけない。かつての宮城球場を知るものにとって、今のクリネックススタジアム宮城はまるで別物である。5階建に増築された球場はフードコートはじめ飲食店街やショップが充実。場外のアトラクションなど、野球観戦以外にも楽しめる仕掛けが施されている。公共施設の経営を民間に委託するというのはこういうことなのかと心から思う。

所有と経営の役割分担のもと民間に経営を任せ、その本性であるコスト意識とお客様第一主義を活かしきるのが官民連携のあるべき姿である。そのためには、あえてPFI事業をリスクにさらす勇気が必要だ。当の事業リスクがコスト意識とお客様第一主義の発奮材料だからである。一方、民間企業の経営原理は収支の見込みが立たないところに進出しないのが旨である。官民連携の場合、丸腰の民間企業が進出するには厳しい分野に進出させようとするのであるから一定度のハンディキャップは必要だ。

PFIは、他の地方公営企業と同様、借入返済含めすべての費用を料金収入で賄う独立採算制が原則であるが、契約に基づき一定のサービス購入料を地方公共団体から別途受け取るケースが多い。今後も、公共の福祉と経営原理のギャップを埋める意味で、地方公共団体がPFI事業に支払う「サービス購入料」が必要なことには変わりない。しかし、その額について黒字不足を事後的に補うように変動させるのではなく、あらかじめ固定させておくのがポイント。官民の折り合いの付けどころである。儲けの薄い公共分野に進出を促しつつ民間活力を活かそうとするならば、親団体がPFI事業に給付する補てん金の性質を「事後補てんモデル」から「リスク移転モデル」に変えなければならない。

親団体の財政支援の性質と、資金不足に陥った場合の対処法

さらに債権者にとっては担保となる公共施設の買取保証。これの廃止も必要だ。そうすると万一の際の公共施設の売却額が時価になる。適切な施設メンテナンスを怠ると転売価額が下がり、事業譲渡しようとしたプロジェクト会社が損失を被ることになる。視点をかえればこれがメンテナンスのインセンティブにつながる。民間経営に消極的な理由のひとつに、コスト削減が高じて必要な更新投資もおざなりになってしまうのではないかというものがあるが、このように転売価額が変動する仕組みを取り入れることによって解決可能だ。

本稿ではPFIの機能別分類を提唱し、従来型の「建設費延払型」に対してPFI本来の意義を体現した「経営委託型PFI」を定義している。スキーム上の違いはどこにあるか。建設費延払型PFIは建設業者がイニシアティブをもったが、経営委託型PFIでは運営側がもつ。建設業者はPFI事業に出資しない。少なくとも議決権はもたず、全体の利害関係チームから外れる。建設費の延払いが目的でなければ出資の仕組みはそもそもいらない。建設業者がイニシアティブをもたない理由は他にもある。建設業者と運営会社は利益相反するので経営委託のメリットが働かないことだ。新江ノ島水族館もクリネックススタジアム宮城の例も運営会社がイニシアティブをもって進めたプロジェクトだった。

タラソ福岡は、PFI事業のイニシアティブを建設業者がもつ一方で、前述の「リスク移転モデル」が機能したため最終的に経営破たんの憂き目にあった。地方公共団体の財政支出を抑えるメリットが見出せた反面、運営会社の経営原理は十分に発揮できなかったのだ(※2)

PFIの拡大と「官民金利差」問題

改正PFIの目玉にコンセッション方式の導入がある。民間企業が「公共施設等運営権」を取得した上で、自らの企画で公共施設を運営し料金をとることができるようになった。公共施設等運営権は物権とみなされ、不動産の規定に準じて売買や担保設定ができるようになる。「公共施設等運営権」方式が導入されることで、運営権譲渡や担保設定が以前に比べ機動的に行えるようになると期待されている。昨年閣議決定された新成長戦略では、PFI事業規模について2020年までの11年間で少なくとも約10兆円以上、従来の事業規模の2倍以上の拡大を目指すものとされている。

ところでPFIは公共施設単独で借りたときの金利が親団体の借入金利よりも安いときに金融上のメリットが成り立つ。国がいざというときには弁償してくれるだろう期待、いわゆる「暗黙の政府保証」によって金利水準が上げ止まりしている現状ではなかなか難しい。地方財政の自立が前提なのだ。PFIを直訳するとPrivate =民間の、Finance=資金が、Initiative=主導する、となる。しかし、文字通り民間の資金が主導すると公共施設の整備にあたって資金調達コストが上がってしまう。公共施設はコスト総額に占める金利の割合が大きいので、経営委託型PFIが頑張って建設ないし運営コストを下げたとしても、金利コストの上昇分で相殺されてしまうのだ。運営の工夫の余地が大きい野球場はともかく水道など設備集約型のインフラにおいては官民金利差の影響をもろに受ける。インフラの老朽化と財政の危機において、経営委託型PFIは解決策として非常に有望である。が、本腰を入れてPFI事業の拡大を目指すのであれば、まずはこの「官民金利差」問題をなんとかしなければならないだろう(※3)

(※1)次の記事を参考。
宮城に誕生したプロ野球チーム 東北楽天ゴールデンイーグルスとともに」(2008年9月、宮城県)
本文には書かなかったが、官と民だけでなく、地域社会にも多大な貢献がなされていることを忘れてならない。もともと野球に詳しくないが、筆者も仙台に在住していたころ年に3回は球場に足を運んだ。今も楽天の試合結果は必ず見る。

(※2)従来型PFIに内在する利益相反問題については次の記事を参照のこと。なお、タラソ福岡の事例は官のリスクが民に移転されることで公金支出の削減につながった点でみればPFIの成功事例といえる。言い換えれば、タラソ福岡の「失敗」事例にこそPFIの成功要因が隠されているのである。
2011年3月30日付コンサルティングインサイト「タラソ福岡の「失敗」にみる官民連携ファイナンスのヒント

(※3)改正PFIの特徴と、その実現のために必要な条件については次の記事を参照のこと。
2011年5月11日付コンサルティングインサイト「新型PFIと行政キャッシュフロー計算書~震災復興と財政規律の両立に向けて~
なお筆者は、同様の趣旨で衆議院財務金融委員会の意見陳述を行っている。
第177回国会 財務金融委員会 会議録(2011年7月15日)

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