日本は「正規雇用の解雇が最も難しい国」?

EUと比べて雇用保護が厳しいわけではない。労働市場の二極化が問題

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2014年03月18日

  • 矢澤 朋子

サマリー

◆日本では「国家戦略特別区域」の指定が迫りつつある中、規制緩和の柱である雇用に関する議論が活発化している。「解雇特区」などと表現され、正社員が解雇されやすくなるとの批判も多いが、OECDの指摘を引用して「日本は解雇が最もしづらい」と規制緩和の必要性を説く意見もある。OECDは以前から日本の正規雇用に対する雇用保護が極めて強いことを繰り返し指摘し、是正するよう勧告してきた。しかし、日本は本当に「正規雇用の解雇が最も難しい国」なのだろうか。


◆報道などでよく取り上げられる、OECDのEPL指標(雇用保護規制の強さを測る指標)によると、日本は正規雇用に対する保護の強い国と位置付けられる。しかし、OECDの大半を占めるEU加盟国にも規制の厳しい国は多くあり、EPL指標の結果のみでは日本が特に非難される理由とはならない。


◆OECDの勧告を確認すると、最も問題視しているのは日本の正規雇用に対する強い保護規制そのものではなく、それが正規/非正規の格差を生み出していることである。日本の非正規の年収は正規の6割程度に抑えられており、格差の縮小も見られない。EUコア国でも正規/非正規の収入格差は存在するが、日本のそれよりも小さい。


◆EUでは明確な労働条件の提示義務の下、フレキシキュリティという雇用の柔軟性と失業時の手厚い保障を同時に行う労働市場政策を行っている。日本政府案では契約型の雇用形態の普及を目指しているが、それの達成には、EUのように失業時のセーフティネット(保障、職業訓練、就職支援等)も同時に手厚くすることが必要であると考える。

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