2012年12月03日
サマリー
我が国の地球温暖化対策は、2013年度から新たな排出削減目標に向けて取り組むことになっている。新たな目標とは、2010年1月に政府がコペンハーゲン合意(※1)に基づいて国連に登録した「2020年に1990年比で25%削減する」ことである。因みに、2012年度までの目標は、京都議定書で定められた「2008年~2012年に1990年比で6%削減する」ことである。
目標に向けて具体的な対策に取り組むには、基礎的な枠組みを定めた法律を制定する必要があろう。法律には数値目標が明記され、国および地方公共団体が実施計画を策定することが規定されることになる。図表1は、2012年までと2013年以降の地球温暖化対策の目標、法律、計画の関係をまとめたものである。
図表1 地球温暖化対策の目標と法律及び計画

(出所)大和総研作成
2012年までの京都議定書の目標については、2008年および2009年の景気後退や2011年、2012年の省エネ等を要因として達成できる可能性は残されている。しかしながら、2013年以降のコペンハーゲン合意に基づく目標については、2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、原子力発電所の稼働率が著しく低下したため、目標を達成できる見込みは立っていない(※2)。
このような状況の下、衆議院で審議中であったコペンハーゲン合意に基づく目標達成のための法案等(内閣案、自民党案、公明党案)が、2012年11月16日の衆議院解散に伴い審査未了ですべて廃案になった。法案に明記されていた目標の達成見込みが立っていないのだから廃案は当然かもしれないが、現在、予算編成中の2013年度以降の地球温暖化対策の計画の根拠法がなくなったことになる。しかしながら、これにより今後決定される予定の中長期のエネルギー戦略と整合する、すなわち“科学的根拠を持った”新たな目標と法律作りが開始されることになったともいえよう。
目標については、2012年11月27日に政府が骨子案を示したグリーン政策大綱や、今後策定される予定のエネルギー基本計画、原子力政策、電力システム改革戦略等の下で見直しが行われた後、国連に適切な情報を提出する予定になっている。
法案については、新たな目標が明記されたものが国会で審議されることになる。図表2は、今回、廃案になった政府案(※3)、自民党案(※4)、公明党案(※5)の施策の論点をまとめたものである。いずれも目標達成のために温室効果ガスの排出に伴う外部不経済を汚染者に内部化する経済的手法である。「地球温暖化対策のための税」及び「固定価格買取制度」は今年度から運用が始まっているため、次の法案のポイントは「国内排出量取引制度」の取り扱いである。海外ではEUや豪州等で導入されており、韓国や中国も数年内の実施を表明している(※6)。国際社会の動向を背景に導入を図りたい動きがある一方で、日本は原子力の取り扱いを見直している状況にあり、産業界の国際競争力が損なわれることや、炭素リーケージ(※7)が生じるとの理由で反対する勢力もある。国内排出量取引制度についての主張が平行線をたどり、審議の遅れなどで法案の成立が遅れると、地球温暖化対策の実施が遅れてしまうリスクもぬぐえない。
図表2 主な論点における政府案・自民党案・公明党案の比較

(出所)大和総研作成
(※1)デンマーク・コペンハーゲンで2009年12月に開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)の成果の一つで、日本を含む先進国は2020年までに削減すべき目標、途上国は削減のための行動をそれぞれ決めて、2010年1月末までに提出することに留意した合意のこと。登録した目標に法的拘束力はない。
(※2)コペンハーゲン合意の目標を達成するための当時のエネルギー基本計画(平成22年6月)では、2020年までに9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を目指すとしている。
(※3)内閣提出、第176回国会閣法第5号(2010年10月13日受理)の本文
(※4)野田毅議員他提出、第174回国会衆法第7号(2010年 3月19日受理)の本文
(※5)江田康幸議員提出、第174回国会衆法第15号(2010年 4月14日受理)の本文
(※6)諸外国における排出量取引の実施・検討状況は環境省ウェブサイトにまとめられている。
(※7)企業が国際競争力を維持するために排出量規制の厳しい国から緩い国々へ産業や工場が移転し、地球規模では排出量が増加してしまうこと。
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