セルフメディケーション推進のためには家計へのインセンティブ付けが必要

マイナンバーカード活用によるOTC医薬品費用の還元が有力な選択肢

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2022年03月17日

サマリー

◆軽微な体調不良につき、保険診療・処方薬の利用が控えられOTC医薬品が活用されるようになると、潜在的には2,330億円(OTC医薬品のコスト819億円を差し引いたネットでは1,511億円)の医療費抑制につながるとの先行研究がある。国民のセルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする)意識を高め、OTC医薬品で置き換え可能な症状について自主服薬を推進することは社会保障制度を持続させるための制度改革のメニューの1つとして期待されている。

◆本レポートにて、OTC医薬品の活用による医療費の抑制金額の各主体への帰属を試算したところ、公費負担分が513億円、企業負担分が501億円、家計負担分が1,316億円(うち保険料分716億円、窓口負担分600億円)減少する試算結果となった。もっとも、家計のうち窓口負担分だけをみれば、OTC医薬品購入費の819億円を差し引いたネットで219億円の負担増となる。既存のセルフメディケーション税制を考慮しても、現状の制度のままでは自主服薬は進まない構図にある。

◆可能なものについて自主服薬を推進するためには、家計にとって、保険診療・処方薬にかかるコストよりOTC医薬品にかかるコストを低くしてインセンティブ付けする制度改正が必要である。そのための具体的な方法論として5つの案が考えられるが、患者の受診機会を現状比で抑制しない観点、および制度の執行可能性を確保する観点などから、国としてのマイナンバーカードを活用したOTC医薬品購入費の還元制度や、保険者単位でのOTC医薬品購入費の補助制度の導入が有力な選択肢となろう。

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