次期介護保険制度改正の注目点(前編)

期待される科学的な裏付けに基づく介護の確立と普及

RSS

2019年11月25日

サマリー

◆次期介護保険制度改正(2021年度から施行)に向けた議論が注目される。主な論点は、①介護予防・健康づくりの推進、②保険者機能の強化、③地域包括ケアシステムの推進、④認知症「共生」・「予防」の推進、⑤持続可能な制度の再構築・介護現場の革新、の5点である。本稿では注目のテーマをいくつか取り上げ、議論の方向性を探る。

◆①では、地域包括支援センターなど、高齢化の進展で業務過多となっている介護現場の効率化に注目する。②では、2018年度から開始されたインセンティブ交付金の評価指標の在り方等について考える。③では、医療・介護連携を後押しする一体的なデータベースの構築に向けた動きを取り上げる。⑤では、現場の効率性・生産性向上に向けたペーパーレス化等がポイントである。

◆人手不足によって一部のサービスを中心に過剰な業務負担が生じていることから、介護の現場の効率化は不可欠である。介護事業ではペーパーレス化に伴うICT化が求められており、医療・介護連携、さらに科学的な裏付けに基づく介護を確立していく必要がある。また、アウトカムを重視した介護に積極的に取り組み努力する保険者が報われる仕組みを強化することが、質の高い介護サービスの広がりを後押しし、不合理な地域差の縮減にも寄与するだろう。次期制度改正によって科学的な裏付けに基づく介護の確立と普及に向けた体制構築が進むと期待したい。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。