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在職老齢年金の見直しは必要か

見直しには就業促進効果だけでなく再分配効果も考慮すべき

2018年08月20日

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

政策調査部 研究員 佐川 あぐり

サマリー

◆政府は在職老齢年金制度の見直しを検討する方針である。在職老齢年金制度は、高齢者の就労を阻害しない観点と現役世代の負担に配慮する観点の二つの要請から累次の制度改正が行われてきたが、現在もその構図は変わっていない。

◆在職老齢年金制度と高齢者の就業行動に関する先行研究を整理すると、60歳台前半については就業を一定程度抑制しているとするものが多い。他方、60歳台後半に対する就業抑制効果はほとんど見られない。

◆在職老齢年金制度を廃止するとすれば、財源を検討する必要がある。仮に現行制度のフレームワークの下で給付を増やせば、マクロ経済スライドによる給付水準の調整が長期化し、将来の年金受給者から現在の高所得の年金受給者への所得移転が発生する。

◆上限として固定化されたばかりの保険料率の引き上げも国民的理解が得られないだろう。標準報酬月額上限の引き上げは将来の年金給付を増やすため、長い目で見て財源にはならない。そもそも給付との対価性がある保険料負担の引き上げは原理的に財源にならず、実際問題としては保険料負担の増加は労働需要を減退させる恐れがある。

◆65歳以上の在職老齢年金制度は現在の仕組みを維持するのが妥当だろう。60歳台前半の制度については、就業促進効果や再分配効果、特定の世代だけが恩恵を受けるという点などを勘案した検討が求められる。本来は、支給開始年齢のさらなる引き上げや繰上げ・繰下げ受給の弾力化などを含め、「人生100年時代」という視野に立って検討すべき課題である。

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