サマリー
◆政府は在職老齢年金制度の見直しを検討する方針である。在職老齢年金制度は、高齢者の就労を阻害しない観点と現役世代の負担に配慮する観点の二つの要請から累次の制度改正が行われてきたが、現在もその構図は変わっていない。
◆在職老齢年金制度と高齢者の就業行動に関する先行研究を整理すると、60歳台前半については就業を一定程度抑制しているとするものが多い。他方、60歳台後半に対する就業抑制効果はほとんど見られない。
◆在職老齢年金制度を廃止するとすれば、財源を検討する必要がある。仮に現行制度のフレームワークの下で給付を増やせば、マクロ経済スライドによる給付水準の調整が長期化し、将来の年金受給者から現在の高所得の年金受給者への所得移転が発生する。
◆上限として固定化されたばかりの保険料率の引き上げも国民的理解が得られないだろう。標準報酬月額上限の引き上げは将来の年金給付を増やすため、長い目で見て財源にはならない。そもそも給付との対価性がある保険料負担の引き上げは原理的に財源にならず、実際問題としては保険料負担の増加は労働需要を減退させる恐れがある。
◆65歳以上の在職老齢年金制度は現在の仕組みを維持するのが妥当だろう。60歳台前半の制度については、就業促進効果や再分配効果、特定の世代だけが恩恵を受けるという点などを勘案した検討が求められる。本来は、支給開始年齢のさらなる引き上げや繰上げ・繰下げ受給の弾力化などを含め、「人生100年時代」という視野に立って検討すべき課題である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
iDeCoは広がったのか-加入実態と残る課題
2026年4月加入者数395万人、12月制度改正に注目
2026年06月16日
-
高齢者医療費自己負担への資産勘案に関する主要論点の整理
『大和総研調査季報』2026年春季号(Vol.62)掲載
2026年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

