医療費適正化計画は地域の課題を解消するか

地域の実情に応じて予防などの取組を着実に進めることが求められる

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2018年06月04日

サマリー

◆2018~23年度の6年間を実施期間とする第三期医療費適正化計画がスタートした。医療費適正化計画とは、生活習慣病の予防推進などにより、増加する医療費を抑制するための計画である。本稿では、これまでの医療費適正化計画とその実績を確認するとともに、都道府県別に見た一人当たり医療費の高額な都道府県と低額な都道府県で、策定された医療費適正化計画での取組に違いがあるかなどについて検討する。

◆第一期(2008~12年度)は、目標を達成していない取組があるにもかかわらず、2012年度の医療費の実績が見通しを下回った。だが、それは2008年度時点で医療費見通しが過大だったことに起因している。適正化によって医療費の伸び率がどの程度抑制されたかを検証し、今後の取組に反映させることが、医療費適正化計画には求められる。

◆第二期(2013~17年度)の実績評価は今後公表される予定だが、これまでの各種の取組の進捗状況を踏まえると、目標は達成できなかったと考えられる。また、都道府県ごとに見られる進捗状況のばらつきが固定化されている様子もうかがえる。進捗の遅れが常態化する都道府県では、医療費の増加を合理的に抑制するための手法の見直しも必要だろう。

◆第三期では、これまで以上に幅広い取組が基本方針に盛り込まれているが、公表された各都道府県の第三期の計画を見ると、取組メニューに多少の違いはあるものの、地域ごとの課題に向き合う計画は一部にとどまり、全体的には大きな違いがない。医療費適正化計画には直ちに効果が現れない取組施策が多い。生活の質を確保・向上させつつ、医療費の適正化を図るには、生活習慣病の予防推進などの取組を着実に進めることが最低限、必要だ。

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