家計の社会保障負担増を抑えられるか
~求められる改革の規模と課題~『大和総研調査季報』『大和総研調査季報』 2017年春季号(Vol.26)掲載
サマリー
家計の社会保障負担は賃金の伸びを大きく上回るペースで増加しており、消費の抑制要因となっている。現行制度を維持した場合、実効的な社会保険料率である社会保障負担率は長期に上昇し、医療・介護における家計の社会保障負担率は2060 年度で現在の約3倍に達すると見込まれる。
医療・介護分野では、改革工程表で2016 年末までに結論を得ることとされていた項目を中心に、様々な改革が2017 年から順次施行されることになった。ただ、保険料負担の軽減規模は所得対比でごくわずかである。際限のない社会保障負担の増加に歯止めをかけ、家計の将来不安を和らげて消費を活性化させるためには、現時点では具体的な議論まで進んでいないほどの大胆な改革をできる限り早く行う必要がある。特に、医療費の伸びのうち高齢化要因では説明できない「その他」要因を長期に抑制することが不可欠である。
必要な改革が遅れると、なし崩し的に問題が悪化していき、最終的には対処できなくなる恐れがある。家計の社会保障負担率の将来推計は、こうしたリスクが小さくないことを示唆している。将来の目指すべき姿から逆算的に必要な改革を議論し、実行に移す重要性は増している。
大和総研 調査本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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