サマリー
家計の社会保障負担は賃金の伸びを大きく上回るペースで増加しており、消費の抑制要因となっている。現行制度を維持した場合、実効的な社会保険料率である社会保障負担率は長期に上昇し、医療・介護における家計の社会保障負担率は2060 年度で現在の約3倍に達すると見込まれる。
医療・介護分野では、改革工程表で2016 年末までに結論を得ることとされていた項目を中心に、様々な改革が2017 年から順次施行されることになった。ただ、保険料負担の軽減規模は所得対比でごくわずかである。際限のない社会保障負担の増加に歯止めをかけ、家計の将来不安を和らげて消費を活性化させるためには、現時点では具体的な議論まで進んでいないほどの大胆な改革をできる限り早く行う必要がある。特に、医療費の伸びのうち高齢化要因では説明できない「その他」要因を長期に抑制することが不可欠である。
必要な改革が遅れると、なし崩し的に問題が悪化していき、最終的には対処できなくなる恐れがある。家計の社会保障負担率の将来推計は、こうしたリスクが小さくないことを示唆している。将来の目指すべき姿から逆算的に必要な改革を議論し、実行に移す重要性は増している。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
介護情報基盤の構築に向けた現状と課題
全国実施の遅れは地域包括ケアシステムの推進にもマイナスの影響
2025年07月10日
-
医療等情報の二次利用に向けた環境整備
医療DXの効果を可視化し、一次利用を広げることがカギ
2025年06月12日
-
対象者拡大から8年、今後のiDeCoの可能性
iDeCo加入者数363万人(2025年3月末)、対象者拡大前の12倍に
2025年05月27日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日