サマリー
老後の生活に強い不安を抱える家計はかなり多い。その背後には、現在の年金制度が経済社会の変化に対応していないことがある。将来の公的年金は当初の想定よりも引き下げられる可能性が高まっており、就業形態や勤め先企業が引退後の所得に与える影響も大きくなっている。
2016年に入り、年金制度改革に進展が見られた。3月には年金改定ルールの見直しを含む公的年金改革関連法案が国会へ提出され、5月には企業年金の普及・拡大や個人型確定拠出年金(DC)の加入対象者拡大などが盛り込まれた改正DC法が成立した。企業負担が大幅に軽減されるリスク分担型確定給付年金は2016年度に導入される予定である。
家計の将来不安を和らげる観点からは、マクロ経済スライドの実施条件をなくし、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大を着実に進める必要がある。企業年金の普及・拡大には企業の自主性が不可欠であり、インセンティブ設計がカギだろう。所得水準の低い就業者が主体的に個人型DCへ加入する環境整備も重要課題である。仕組みを周知するとともに、個人型DCへ最も加入すべき人々が利用しやすい制度とする工夫が求められる。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
介護情報基盤の構築に向けた現状と課題
全国実施の遅れは地域包括ケアシステムの推進にもマイナスの影響
2025年07月10日
-
医療等情報の二次利用に向けた環境整備
医療DXの効果を可視化し、一次利用を広げることがカギ
2025年06月12日
-
対象者拡大から8年、今後のiDeCoの可能性
iDeCo加入者数363万人(2025年3月末)、対象者拡大前の12倍に
2025年05月27日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日