超高齢社会医療の効率化を考える

IT化を推進し予防・健診・相談を中心とした包括的な医療サービスへ

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2013年08月15日

サマリー

◆2010年時点で日本の国民医療費の55.4%は、65歳以上の高齢者の医療費が占めている。高齢者の一人当たり医療費は、平均でその他の世代の5倍近くかかっているが、その高齢者が総人口に占める割合は年々上昇し、現在の2割強から2060年には4割に高まると推計されている。超高齢社会を突き進み高齢者が増加するのに伴い、医療費はさらに増え続けると予想される。


◆ただし、日本の高齢者の医療に対する行動パターンを見てみると、自身について比較的健康であると自覚しながらも、頻繁に通院しているケースが他国と比べて多いことが各種調査から窺われる。その背景には、病気に対する不安感の強さや、病気予防・健康維持に強い関心を持つ高齢者の姿があるようだ。必要性の低い受診が多発しているとすれば、是正する余地は大きいとも言えるだろう。


◆そこでたとえば、医療のIT化を推進しつつ、多様な患者に幅広く対応する「かかりつけ医」を中心とした医療スタッフを各地域に整備していくことなどが考えられるだろう。IT化されたデータを駆使して予防医療、健診、健康相談を重点的に行えば、症状の重症化や診療・処方の重複を回避することができるだけでなく、高齢者の抱える不安を緩和・解消することもでき、不要不急の受診を抑制することも可能となろう。


◆また、低く抑制されている高齢者の患者自己負担額や保険料負担についても、医療費全体の巨額さや財源不足問題を意識しづらくなっていることから改善の余地があると考える。高齢者のニーズを満たす医療サービスの充実を目指すと同時に、サービス購入者(受益者)の費用負担の適正化や実効的な「かかりつけ医」体制の確立を支援するような診療報酬上の工夫も必要となろう。

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