サマリー
◆2010年時点で日本の国民医療費の55.4%は、65歳以上の高齢者の医療費が占めている。高齢者の一人当たり医療費は、平均でその他の世代の5倍近くかかっているが、その高齢者が総人口に占める割合は年々上昇し、現在の2割強から2060年には4割に高まると推計されている。超高齢社会を突き進み高齢者が増加するのに伴い、医療費はさらに増え続けると予想される。
◆ただし、日本の高齢者の医療に対する行動パターンを見てみると、自身について比較的健康であると自覚しながらも、頻繁に通院しているケースが他国と比べて多いことが各種調査から窺われる。その背景には、病気に対する不安感の強さや、病気予防・健康維持に強い関心を持つ高齢者の姿があるようだ。必要性の低い受診が多発しているとすれば、是正する余地は大きいとも言えるだろう。
◆そこでたとえば、医療のIT化を推進しつつ、多様な患者に幅広く対応する「かかりつけ医」を中心とした医療スタッフを各地域に整備していくことなどが考えられるだろう。IT化されたデータを駆使して予防医療、健診、健康相談を重点的に行えば、症状の重症化や診療・処方の重複を回避することができるだけでなく、高齢者の抱える不安を緩和・解消することもでき、不要不急の受診を抑制することも可能となろう。
◆また、低く抑制されている高齢者の患者自己負担額や保険料負担についても、医療費全体の巨額さや財源不足問題を意識しづらくなっていることから改善の余地があると考える。高齢者のニーズを満たす医療サービスの充実を目指すと同時に、サービス購入者(受益者)の費用負担の適正化や実効的な「かかりつけ医」体制の確立を支援するような診療報酬上の工夫も必要となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
イタリアISEEに学ぶ、社会保障給付の簡素な判定の仕組み
世帯の所得・資産を一つの指標にまとめる仕組みと、日本の社会保障制度への示唆
2026年10月14日
-
第3号被保険者制度見直しの財政改善効果は厚生年金保険料率0.1%pt分程度
第3号被保険者制度見直しの財政影響を試算
2026年09月25日
-
現役世代の保険料率は引き下げられるか
サービス維持との両立には、給付と負担の改革、DX/AX推進が不可欠
2026年09月02日
最新のレポート・コラム
-
一括取得型自己株式取得(ASR)入門
ASRに関する基本的な事項をQ&A形式で解説
2026年10月16日
-
「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」における金融経済教育に関する記述
金融経済教育関連に限ると、大幅な拡充は行われない方向性か
2026年10月16日
-
日本の長期金利、2035年に5%台の可能性
2035年に3.5~4.2%程度で、海外保有拡大で1%pt超の上乗せも
2026年10月16日
-
なぜ企業は同じ情報を何度も提出しなければならないのか
公的統計のデジタル化を問う①-負担軽減の「効果」
2026年10月16日
-
成長投資の先にあるもの ~AI時代に問われる「組織能力」~
2026年10月16日
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

