公共施設等の整備において伝統的な公共発注とPFIは何が違うのか
PFIの本質とVFMの源泉に関する考察
2018年05月14日
サマリー
◆PFIとはコスト削減とサービス向上を狙いとした公共施設等の整備方法だが、その効果指標である「VFM」の発生メカニズムについては定説がないように思われる。
◆VFMの源泉は、発注手法としてのPFIの特徴から説明可能である。まず、伝統的な公共発注が分離・分割発注および競争入札を特徴とするのに対し、PFIは公共施設等の整備から維持管理、運営までをまとめて民間事業者であるSPCに発注する(バンドル化)。これによって規模の経済性、範囲の経済性、経験効果、工程間の全体最適化によるコスト削減、納期短縮、品質向上をもたらす。次に、伝統的な公共発注においては発注者が地方自治体であるのに対し、PFIは発注者が民間である。言わば発注者と受注者が市場取引の関係から組織内取引に準じた関係になる。これが取引コストの低減をもたらす。
◆もっとも、PFIは民間の経営能力および技術的能力を十二分に引き出すのに適した公共調達の手法であって、それが期待通りに発揮されるかは別問題である。基本計画段階から民間に担わせ、調達と回収、言い換えれば投資額と収入に関する決定権をセットで付与することが民間のインセンティブ向上に寄与する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年05月25日
肥大化する業務
その業務は利益に貢献しているのか
-
2022年05月24日
欧州経済見通し まとわりつく負のオーラ
ウクライナ侵攻の長期化によって、不透明さを払拭できず
-
2022年05月24日
日本経済見通し:2022年5月
経済見通しを引下げ/サービス消費等の「伸びしろ」が景気を下支え
-
2022年05月24日
中国:ゼロコロナ政策下の中国経済の行方
年後半は明確に回復も22年は4.5%程度の実質成長にとどまると予想
-
2022年05月25日
「制度」と「執行」の狭間にある闇
よく読まれているリサーチレポート
-
2022年03月22日
日本経済見通し:2022年3月
ウクライナ情勢の緊迫化による日本・主要国経済への影響
-
2022年01月24日
円安は日本経済にとって「プラス」なのか「マイナス」なのか?
プラスの効果をもたらすが、以前に比べ効果は縮小
-
2022年03月23日
ロシアのウクライナ侵攻で一気に不透明感が増した世界経済
-
2022年02月10日
ロシアによるウクライナ侵攻の裏側にあるもの
ゼレンスキー・ウクライナ大統領の誤算
-
2022年03月17日
FOMC 想定通り、0.25%ptの利上げを決定
ドットチャートは2022-24年にかけて、計10.5回分の利上げを予想