事業承継税制見直しは地方の活性化につながるか

『大和総研調査季報』 2018年春季号(Vol.30)掲載

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サマリー

事業承継税制は、特に地域経済の中核を担っている中小の法人企業について、円滑な事業承継を実現することを目的に2009 年に創設された制度である。数次の制度改正を経て適用件数は拡大傾向にあるが、絶対数としてはまだ十分に普及しているとは言い難い。

事業承継税制のこれまでの適用率は、従業員数の少ない企業ほど低くなっている。小さい企業ほど雇用確保要件の未達リスクを恐れたり、制度を利用しても贈与税や相続税の一部の納付を求められることが重荷になったりしたため、制度利用をためらったものと考えられる。

2018 年度税制改正(案)により、10 年間の期間限定で雇用確保要件が実質的に撤廃され、贈与税額および相続税額の全額の納税が猶予される特例が設けられる。これにより、全体の適用率が一定水準まで上昇すると仮定すると、今後10 年間で約3万社に制度が利用され、制度がなかった場合と比べて約26,000 人の雇用が維持されるものと試算される。

設けられる特例を適用するためには、中小企業は金融機関や商工会議所等の助言・指導を受けて承継計画を策定することが必須となることから、金融機関に求められる役割が拡大することになる。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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