サマリー
本稿では、新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大によって表面化した医療提供体制の問題について整理する。
諸外国と比べて、日本は今回の感染症をある程度うまくコントロールできたようにみえる。だが、国内における対応の地域差は大きかった。今後も起こり得る有事に対処できるようにすることにとどまらず、将来の平時における医療ニーズの変化にもマッチした医療提供体制を確立するには、地域医療構想の推進が必要だ。
また今回の感染拡大では、オンライン診療など新たなテクノロジーの活用が前進した。ポストコロナの社会でそれを一般化させるには、先行している諸外国の状況を参考としつつ、ハードルとなっている医療上の安全性や有効性といった課題へ対処するためのエビデンスの蓄積が必要である。
オンライン診療等の新技術は、今後対策が必要な医師の偏在や働き方改革にもプラスに作用すると考えられる。ただ、日本ではカギを握るEHR等のデータヘルスの基盤整備が道半ばである。新型コロナウイルス感染症の拡大を機に改革を加速できるか、われわれは試されている。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
健康経営の新たな戦略基盤
従業員多様化時代のウェルビーイングプラットフォームの可能性
2025年10月24日
-
健康経営の評価軸は「成果」へシフト
スコープは社会全体のウェルビーイング向上や経済成長にも拡大
2025年09月12日
-
従業員の経済的不安に、企業はどう応えるか
従業員の現在の備えと将来の資産形成を両立する米国企業の取り組み
2025年08月18日

