サマリー
◆少子高齢化が進行する日本では、経済成長を持続させるために労働生産性の向上が課題である。労働生産性を向上させるには、高生産性部門へ労働力をシフトさせる必要があると考えられているが、需要が増えない部門に労働力は移らない。少子高齢化による社会サービスや、訪日外国人観光客によるインバウンド消費に対するニーズが高まる日本では、今後も生産性が低いサービス業への労働力のシフトが進むだろう。
◆厳しい環境の下、労働生産性を向上させるには、各産業の生産性を一段と高めていく必要があるが、中でも労働力ウェイトが高まるサービス業の生産性の引き上げは重要である。直近5年間を見てもほとんど上昇してこなかったサービス業の低い生産性を改善させることは容易でないが、ICT投資の効果を高める組織改革等を実施することなどによって改善することができれば、その効果は大きい。
◆一般に、サービス業の生産性を高めるには、事業のグローバル化のほか、規制緩和やICT(および無形資産)の活用などが考えられるが、中でもICTへの投資が欠かせない。しかしながら、日本のサービス業のICT投資比率は、諸外国と比較しても低くないにもかかわらず生産性の向上に結びついていない。背景には、日本企業の組織改革の後れが指摘できよう。近年ICT利用や研究開発活動、外資比率といった観測可能な企業特性では説明できない企業のマネジメント力(「経営の質」)の影響が、サービス業の生産性向上に与える影響として非常に大きいことが明らかになってきた。
◆コスト削減にとどまらず、積極的に付加価値の向上を図る組織改革を実行していく企業のマネジメント力が、サービス化が進展する日本の労働生産性向上のカギを握っている可能性が高い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
大介護時代における企業の両立支援
〜人的資本のテーマは「介護」にシフト〜『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
2025年度の健康経営の注目点
ISO 25554の発行を受け、PDCAの実施が一段と重視される
2024年12月24日
-
健康経営で高評価を得るポイント
政策の方向性を踏まえた対応と、データ活用による効果検証が必要
2024年09月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日