サマリー
◆2017年3月末、政府の「働き方改革実現会議」から働き方改革の実行計画が公表された。会議前半の大きなテーマは同一労働同一賃金であったが、後半は長時間労働の是正に議論が集中した。しかし、実際に長時間労働は是正されるのだろうか。
◆日本の総労働時間が長期的に減少しているように見えるのは短時間労働者の割合が増えたことが原因であり、正規労働者の労働時間はこの20数年間で変化がない。一方、休日日数は増加していることから、平日における残業にそのしわ寄せが起きている。今後は「平日の残業時間の削減」と「有給休暇取得率の向上」がポイントとなろう。
◆一般に労働時間が長いのは男性であり、特に若年層・中小企業・中所得層で労働時間が長くなる。一方、女性ではより若年層かつ規模の小さい零細企業にて長時間労働者が増えやすい。高所得・高学歴層と低学歴層では男女共に労働時間が長い傾向にある。
◆職種・業種別では、36協定の適用除外の業種である輸送関連で顕著であるが、販売・サービスなどの対個人向けサービスや管理的・専門的な職種・業種に従事している人々でも、労働時間が長くなりやすい。
◆残業時間を規制するはずの36協定は機能せず、割増賃金規制についてもあまり機能してきたとは言えない現実がある。今回の政労使合意では、労働基準法改正により罰則規定付きで残業時間の規制を行うことが合意された。
◆長時間労働規制が機能するには、労働基準監督署の人員増加などで労働市場の監視・制裁機能を強化するのとともに、長時間労働「慣行」の是正もカギになる。日本型雇用慣行を弱め、職務の明確化・雇用流動化などを前提に周辺制度の改革を行うことが重要だ。
◆対価を見込める業務へ貴重な労働時間をシフトさせ、対価を見込みづらい業務は削減するか機械化・IT化を進めることが重要だ。さらに心身の健康を高める余暇の確保や、より重要なのは、技術進歩に備えた自己研さんの時間を作ることだ。今後の雇用流動化の高まりや個人の労働生産性を高める意味でも、能力向上のために時間を確保することは重要であることから、長時間労働の是正はやはり急務であると考える。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
足元で再び増えたテレワーカー
人手不足下の雇用戦略としての新しい手段?
2026年04月28日
-
女性特有の健康課題にどう向き合うか
~対応加速と国際標準化への備え~『大和総研調査季報』2026年新春号(Vol.61)掲載
2026年01月26日
-
2026年度の健康経営の注目点
企業価値向上と地域/国際社会への波及を目指す次のフェーズへ
2025年12月23日
最新のレポート・コラム
-
非農業部門雇用者数は前月差+11.5万人
2026年4月米雇用統計:強弱まちまちもFRBの様子見には十分な結果
2026年05月11日
-
消費データブック(2026/5/8号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2026年05月08日
-
四半期開示義務廃止を提案:米国SEC
大統領の要請に応え規則改正案を提案。四半期開示継続も可能。
2026年05月08日
-
エンゲージメントは促進か抑制か? : 日米政策の分化
大量保有報告制度とエンゲージメントに関する政策は日米で乖離へ
2026年05月07日
-
特別委員会に関する機関投資家の議決権行使基準は変わるか
2026年05月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

