サマリー
◆超高齢社会の医療・介護政策として、政府は地域包括ケアを推進し、在宅ケアの普及を図っている。しかし、2025年に高齢化がピークアウトしていく地方圏と異なり、それ以降も高齢者世帯が急増する大都市圏においては、現状のまま、在宅ケアを推し進めることは問題が多いだろう。
◆核家族化が進む大都市圏では、医療・介護の専門サービスはもちろんのこと、従来、同居家族が負担してきたような日常的な生活支援を含む、ほぼすべてのサービスを、家庭の外に求めなければならないケースが多発すると懸念されるためである。政府は近隣住民によるインフォーマルな「互助」に期待して、在宅ケアを普及させようというが、大都市圏では地域コミュニティの衰退が深刻化しており、難航が予想される。孤立する高齢者世帯の増加も考えられる。
◆これらの問題を解消するためには、大都市圏の高齢化が本格化する以前に、地域のボランティア等の活動を活性化させておくことが考えられるだろう。ボランティア活動への参加が、将来的に、在宅ケアを支える近隣住民の結び付きへと発展していく可能性がある。そのためには、住民の地域活動への参加に対する阻害要因を取り除く必要があるだろう。阻害要因として、活動のための時間が取れないことが最も多く挙げられている。
◆近隣住民によるインフォーマルな支援である「互助」に大いに期待して、深刻化する大都市圏の在宅ケア問題を乗り越えようというならば、今から意図的に近隣住民の「互助」関係を創設していく必要があるだろう。そのためには、各々のボランティア活動等の地域活動への参加を妨げない、むしろ参加することについて何らかのかたちでフィードバックするなど、活動への参加を促すような環境へと転換させていくことが望まれよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
健康経営の新たな戦略基盤
従業員多様化時代のウェルビーイングプラットフォームの可能性
2025年10月24日
-
健康経営の評価軸は「成果」へシフト
スコープは社会全体のウェルビーイング向上や経済成長にも拡大
2025年09月12日
-
従業員の経済的不安に、企業はどう応えるか
従業員の現在の備えと将来の資産形成を両立する米国企業の取り組み
2025年08月18日
最新のレポート・コラム
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
開示府令の改正案が公表(2026年から一部適用)
有価証券報告書のサステナビリティ情報、人的資本、総会前開示に関する改正案
2025年12月10日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
議決権行使助言業者への依拠は共同保有認定
米国SECのウエダ委員が議決権行使助言業者規制の方向性を明らかに
2025年12月09日
-
日中関係悪化、中国は自国経済・社会の不安定化回避を優先か
2025年12月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

