社会保障改革は何が進み、何が遅れているか

集中改革期間で改革が幅広く進められたが踏み込み不足感は強い

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2018年05月18日

サマリー

◆経済・財政一体改革では、改革工程表に盛り込まれた全44項目の検討事項について歳出改革が進められている。このうち38項目は医療・介護分野であり、提供体制の効率化や給付の適正化・重点化、健康増進・疾病予防等へのインセンティブの強化、負担能力に応じた公平な負担など幅広く検討・実施されている。

◆国の社会保障関係費は、2016~18年度で1.5兆円程度の増加にとどめるという「目安」に沿って予算編成が行われた。しかし中身を見ると、所得の高い保険者への国庫負担の付け替えや通常の薬価改定に大きく依存する形で歳出が抑制されており、「目安」に収まる範囲だけで歳出改革が行われたという印象を受ける。

◆様々な改革が進められているが、その多くは緒に就いたばかりである。時間の経過とともに改革の効果が現れ、医療・介護費の地域差が縮減したり伸びが抑制されたりする可能性はある。ただ、それらは不確実性が大きく、確度を持って期待することはできない。

◆実効性の高い財政健全化計画を策定するのであれば、給付の適正化・重点化や、年齢でなく負担能力に応じた負担の徹底など、直接的に成果を上げられる施策を大胆に進めるべきだ。2019年度以降も社会保障関係費に「目安」を設ける必要があるが、「目安」に収めるために数字合わせの改革に陥ることは避けなければならない。

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