サマリー
◆基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化させるための新たな財政健全化計画が2018年度の骨太方針で示される。そこで、数回にわたるシリーズレポートで新たな財政健全化計画に関する様々な論点を取り上げる。
◆内閣府の最新の試算によると、2018年度のPBはGDP比▲2.9%と見込まれている。2016~18年度は経済・財政再生計画の集中改革期間に位置づけられており、「目安」に沿って歳出が抑制された。それにもかかわらず、PB対GDP比は2015年度と同じ水準にとどまる。
◆財政の改善が足踏みしている一因は税収の伸び悩みである。経済成長率が高まった割に税収は伸び悩んでおり、歳入増によるPB改善はますます期待しにくくなっている。
◆歳出抑制が不十分だったことも指摘できる。2016年度以降の歳出改革をマクロ的に見れば、歳出の名目金額で見た規模を「目安」に収めることに終始し、中身の改革の深掘りが不足していた。
◆新たな財政健全化計画には、個々の歳出改革を進める原動力として、2019年度以降も歳出規模に関する新たな「目安」が必要だろう。PB黒字化の達成時期を2025年度と想定すると、2019~25年度における国の一般歳出増加額の「目安」は3.7兆円程度と試算される。1年当たりで見れば集中改革期間の「目安」と同水準だが、実質額ではこれまで以上に厳しい歳出抑制の取組みが求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日