プライマリーバランスはなぜ集中改革期間を経ても改善しないのか

「目安」を最低限とする歳出抑制の深掘りが求められる

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2018年03月05日

サマリー

◆基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化させるための新たな財政健全化計画が2018年度の骨太方針で示される。そこで、数回にわたるシリーズレポートで新たな財政健全化計画に関する様々な論点を取り上げる。


◆内閣府の最新の試算によると、2018年度のPBはGDP比▲2.9%と見込まれている。2016~18年度は経済・財政再生計画の集中改革期間に位置づけられており、「目安」に沿って歳出が抑制された。それにもかかわらず、PB対GDP比は2015年度と同じ水準にとどまる。


◆財政の改善が足踏みしている一因は税収の伸び悩みである。経済成長率が高まった割に税収は伸び悩んでおり、歳入増によるPB改善はますます期待しにくくなっている。


◆歳出抑制が不十分だったことも指摘できる。2016年度以降の歳出改革をマクロ的に見れば、歳出の名目金額で見た規模を「目安」に収めることに終始し、中身の改革の深掘りが不足していた。


◆新たな財政健全化計画には、個々の歳出改革を進める原動力として、2019年度以降も歳出規模に関する新たな「目安」が必要だろう。PB黒字化の達成時期を2025年度と想定すると、2019~25年度における国の一般歳出増加額の「目安」は3.7兆円程度と試算される。1年当たりで見れば集中改革期間の「目安」と同水準だが、実質額ではこれまで以上に厳しい歳出抑制の取組みが求められる。

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