サマリー
◆2018年1月23日に内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)が改定された。現実を踏まえて経済前提が見直されたことにより、経済見通しは前回試算から大幅に修正された。「経済再生ケース」は「成長実現ケース」と改称され、実質GDP成長率の中長期的な見通しは2%台半ばから2%程度へ引き下げられた。
◆2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は成長実現ケースでGDP比▲1.8%と見込まれている。金額では▲10.8兆円であり、前回試算から2.6兆円悪化した。PB黒字化の達成は2027年度に2年後ずれしている。もっとも、長期金利の見通しが引き下げられたことから、公債等残高GDP比の見通しはほとんど変わっていない。
◆経済・財政再生計画の「目安」に沿った歳出抑制と足元の経済成長を織り込んでも、2018年度のPBは財政健全化に取り組む前と同水準のGDP比▲2.9%と見込まれている。安倍内閣は2018年度の骨太方針で具体的かつ実効性の高い財政健全化計画を示す予定である。2016~18年度の集中改革期間でPBが改善しないと見込まれている理由を精査するとともに、計画の実効性を高めるためには、これまで以上に歳出・歳入改革に重きを置く必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
日本の財政の現状① 債務残高と歳入の特徴
財政シリーズレポート1
2025年06月12日
-
PB赤字は2026年度も続く?
予算修正とトランプ関税で3~4兆円の財政悪化も
2025年05月13日
-
2025年度のPBはGDP比1~2%程度の赤字?
減税や大型補正予算編成で3%台に赤字が拡大する可能性も
2025年01月15日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日