サマリー
◆自由民主党・公明党は2022年12月16日に、「令和5年度税制改正大綱」(以下、大綱)を決定した。本レポートでは、大綱で2025年から超富裕層に対する追加課税措置として導入するとしている「ミニマムタックス」について解説する。
◆ミニマムタックスは、年間所得が3.3億円超の納税者において、3.3億円超の部分の所得に対する所得税額の割合が22.5%を下回る場合、22.5%との差分を追加課税する仕組みである。課税対象者は年200人台、税収は年300~600億円程度になるとみられる。
◆所得階級ごとの平均的な所得構成に基づけば年間所得30億円程度からがミニマムタックスの対象者の目安だが、実際には各納税者の所得構成により異なる。給与所得や事業所得など累進課税対象の所得のみの納税者はどれだけ高所得でもミニマムタックスの対象にはならない。他方、例えば、所得の全てが株式譲渡所得や長期の不動産譲渡所得の納税者は、おおよそ、年間所得10億円前後からミニマムタックスの対象となる。
◆日本に限らず、米英独においても、下位から 99.9%程度までの範囲では所得が多い者ほど税負担率が上昇するが、上位 0.1%以内の範囲に限っては所得が多い者ほどかえって税負担率が低下する現象(日本でいう「1億円の壁」に相当する現象)が生じている。所得の上位0.1%以内の範囲における税負担率の低下幅は、米英独より日本がやや大きく見えていたが、ミニマムタックスが導入されれば遜色がなくなる。
◆今後、所得税の垂直的公平性の課題にさらに対処する必要が生じた際は、ミニマムタックスの課税対象者や税率を調整すればよく、中間層を含めた金融所得税率の一律引き上げを行う必要性は低くなる。この点は、大多数の投資家にとって朗報と言えるだろう。
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