賃上げ税制が中小企業の事業拡大に追い風となる

令和4年度税制改正大綱解説—賃上げ税制

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2021年12月24日

サマリー

◆2021年12月10日に自由民主党・公明党は「令和4年度税制改正大綱」(以下、大綱)を取りまとめた。本レポートでは大綱に盛り込まれた「アメとムチ」からなる「賃上げ税制」の改正について解説する。

◆大綱では、大企業には、継続雇用者の平均給与(定昇含む)を前年度比3%以上引き上げた企業に減税の「アメ」を与えるとしている。一方、一定の利益をあげながらも継続雇用者の平均給与(定昇含む)を前年度比+1%未満としている場合には、研究開発税制などの既存の租税特別措置が適用できなくなる「ムチ」を与えるとしている。

◆大企業のうち、建設業、教育,学習支援業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業では定期昇給率が2%台後半にあり、あと少しの賃上げ実施で「アメ」が与えられるため、税制改正を契機とした賃上げ実施が行われやすいだろう。また、定期昇給率が1%を下回る生活関連サービス業,娯楽業では、「ムチ」を回避する観点から賃上げにプレッシャーがかかる可能性もある。

◆大綱では、中小企業には、(人数×平均給与からなる)総人件費を前年度比で1.5%以上引き上げた場合に減税の「アメ」を与えるとしている。中小企業では、賃上げ税制による税額控除とそもそもの支払給与の損金算入を合わせ、追加的な給与の支払いに対して最大で約70%分が税負担の軽減として戻ってくることとなり、事業規模が拡大過程にある中小企業にとって強い追い風となるだろう。

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