「静かなる金融所得増税」が行われる

令和4年度税制改正大綱解説①—証券・金融税制(足元の改正)

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2021年12月13日

サマリー

◆2021年12月10日に自由民主党・公明党は「令和4年度税制改正大綱」(以下、大綱)を取りまとめた。証券・金融税制関連では、今後の検討事項として課税強化をにらんだ表現が追加される一方、足元の改正は見送られたとの報道も多く見られる。しかし、実際には、足元でもいくつかの「静かなる金融所得増税」が盛り込まれている。

◆現行制度では、上場株式等の所得につき所得税と住民税で異なる課税方法を選択することで主に中低所得層が税負担(または社会保険料負担)を抑えることができるが、大綱では、所得税と住民税の課税方式を統一するとした。「異なる課税方式の選択」はこれまであまり普及していなかったが、2022年の確定申告より申告手続きが簡素化されることが既に決まっており、中低所得の個人投資家が投資に係る税負担を抑える制度として期待された矢先の制度改正となった。

◆富裕層に対しては、「大口株主」の定義を改正し資産管理会社等を経由する分も含めて間接的に上場企業の株式を3%以上保有する者についても、配当所得を総合課税とするとした。直接保有と間接保有の場合につき、課税を強化する方向で公平性を確保することとなった。

◆このほか、足元の改正として、財産債務調書制度の対象者の拡大、グループ内支払配当への源泉徴収の廃止などを行うとしている。

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