サマリー
◆2020年12月10日に自由民主党・公明党が公表した「令和3年度税制改正大綱」(以下、大綱)では、相続税・贈与税について「資産移転の時期の選択に中立的な税制」の構築に向けて「本格的な検討を進める」としている。
◆現在の日本の贈与税は、納税者が暦年課税と相続時精算課税のいずれかを選択できる。贈与税で暦年課税を選択した場合は、贈与の時期、および贈与であるか相続であるかにより贈与と相続のトータルの税負担が大きく異なる。これに対し、米国・ドイツ・フランスでは相続税と贈与税を統一的に扱い、資産移転の時期の選択により大きな税負担の差が生じない仕組みであり、これらの国を参考に改革が検討されると考えられる。
◆「資産移転の時期の選択に中立的」な税制を目指すことは、資産移転の時期の選択によって税負担を抑える余地が小さくなることも意味する。租税法律主義を踏まえると、改正の施行前の贈与に遡及増税が適用される可能性は低いため、政府・与党で税制改正の検討が進むにつれ、施行前の「駆け込み贈与」のニーズが強まる可能性も考えられる。
◆現在の日本の相続税・贈与税の税収は、名目GDP比で主要国と比較して相対的に高水準にあり、直近の2013年税制改正時からの物価・地価の変動を踏まえても増税を行うべき積極的な理由は見出しづらい。だが、「資産移転の時期の選択に中立的」な税制を目指すことで結果として増税方向の改正となることも考えられ、その際には相続・贈与をサポートする金融機関のビジネスのあり方にも影響を与えるであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
2025年度税制改正大綱解説
大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか
2025年01月06日
-
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
岐路に立つ日本の人的資本形成
残業制限、転職市場の活発化、デジタル化が迫る教育・訓練の変革
2025年01月09日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
2025年度税制改正大綱解説
大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか
2025年01月06日
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
岐路に立つ日本の人的資本形成
残業制限、転職市場の活発化、デジタル化が迫る教育・訓練の変革
2025年01月09日