自社株対価の買収を促す税制措置の創設

買収に応じた株主に対する株式譲渡益課税を繰り延べ

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サマリー

◆2020年12月10日に公表された「令和3年度税制改正大綱」において、株式対価M&Aを促進するための税制措置を導入することが明らかにされた。これは、2019年の改正会社法で導入された、自社株対価の買収(子会社化)を実施しやすくする「株式交付制度」(2021年3月1日施行)について、買収に応じた株主の課税を繰り延べるものである。

◆改正前の会社法においても、制度上、自社株対価の買収は可能だが、会社法の現物出資規制等や対象会社の株主に対する課税の発生のため、実務的には困難であると指摘されている。株式交付を活用すれば現物出資規制等が適用されないことに加え、税制改正大綱の株主の課税繰延措置の導入により、自社株対価の買収が実施しやすくなると考えられる。

◆株式交付は、買収会社と対象会社の間で合意する必要がないため、敵対的買収に利用される可能性がある。ただし、買収会社が上場会社であれば事前に株主総会の決議事項が公表され、対象会社に対抗措置を取る猶予が与えられるため、株主総会の特別決議(簡易手続の場合は不要)が必要な場合は、株式交付は敵対的買収には利用しづらいだろう。

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