サマリー
◆2011年6月30日に、政府・与党は「社会保障改革検討本部」にて、社会保障と税の一体改革の原案である「社会保障・税一体改革成案」(以下、成案)を決定した(ただし、閣議決定は行われていない)。今後、2011年度中に「社会保障と税の一体改革」の法案成立を目指し、政府与党成案をもとに野党との協議や詳細の整備が行われる。
◆成案では、2010年代半ばまでに消費税率(国・地方計)を段階的に10%まで引上げるものとしているが、「経済状況の好転」を条件とされており、引き上げの時期は明確化されていない。
◆他方、社会保障改革による社会保障機能の強化については2015年までに、(高齢化による社会保障費の自然増を除き)2.7兆円を増加させるものとしている。社会保障機能強化については2015年という明確な時期の指定がある一方、消費税の増税は非常に高いハードルが設定されており、増税(財源)なき給付の拡大によるさらなる財政悪化も懸念される。
◆さらに、社会保障機能強化にかかる費用の2.7兆円についても、機能強化にかかる3.8兆円から抑制による削減額1.2兆円を差し引いた額とされるが、成案に示された具体的な改正案を足し上げた金額は(四捨五入等の影響を勘案しても)これと一致しない。給付抑制策が十分に行われないこと、社会保障機能強化にかかる費用がさらに拡大することが懸念される。
◆少なくとも、消費税率の引上げができなければ社会保障の機能強化も行わないようにし、かつ、消費税率引上げ時にはその大部分を財政健全化に資する形とすることが必要である。政府・与党には消費税率引上げ時期の明確化と、具体的な社会保障給付の抑制策の決定が求められる。
◆成案では、2010年代半ばまでに消費税率(国・地方計)を段階的に10%まで引上げるものとしているが、「経済状況の好転」を条件とされており、引き上げの時期は明確化されていない。
◆他方、社会保障改革による社会保障機能の強化については2015年までに、(高齢化による社会保障費の自然増を除き)2.7兆円を増加させるものとしている。社会保障機能強化については2015年という明確な時期の指定がある一方、消費税の増税は非常に高いハードルが設定されており、増税(財源)なき給付の拡大によるさらなる財政悪化も懸念される。
◆さらに、社会保障機能強化にかかる費用の2.7兆円についても、機能強化にかかる3.8兆円から抑制による削減額1.2兆円を差し引いた額とされるが、成案に示された具体的な改正案を足し上げた金額は(四捨五入等の影響を勘案しても)これと一致しない。給付抑制策が十分に行われないこと、社会保障機能強化にかかる費用がさらに拡大することが懸念される。
◆少なくとも、消費税率の引上げができなければ社会保障の機能強化も行わないようにし、かつ、消費税率引上げ時にはその大部分を財政健全化に資する形とすることが必要である。政府・与党には消費税率引上げ時期の明確化と、具体的な社会保障給付の抑制策の決定が求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
道府県民税利子割への清算制度導入を提言
令和8年度税制改正での実現は不透明な情勢
2025年08月13日
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
-
「103万円の壁」与党修正案の家計とマクロ経済への影響試算(第5版)
所得税の課税最低限を160万円まで引き上げる与党修正案を分析
2025年03月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日