サマリー
◆金融商品の種類によって課税区分が異なり、損益通算が行えないのであれば、利益が出たときにはそのまま課税される一方で、損失が出たときには損失分の税負担が軽減されないことになってしまう(以下、「課税の非対称性」と呼ぶ)。
◆課税の非対称性が存在すると、表面上の税率よりも投資家が負担する「実効税率」は高くなりうる。本稿では、課税の非対称性を考慮したわが国のこれまでの税制の実効税率の実績値および、2012年以降の金融所得課税一体化を想定した実効税率の理論値を求めた。
◆2012年以降、課税の非対称性が残ったまま、上場株式の配当・譲渡益に対する税率が20%になった場合の実効税率の理論値を求めると、(個人段階の)実効税率は41.66%となり、預貯金や債券の利子などと比べて過重な負担を求めることとなる。株式の表面税率を20%に引き上げるための条件としては、少なくとも幅広い損益通算、繰り越し・繰り戻し控除などを行い実効税率を上げないようにすることが求められる。
◆さらに、株式の配当・譲渡益課税については法人と個人の二重課税の問題もある。課税の非対称性の問題と合わせると、現行の10%税率も不合理であるとはいえないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
金融庁、NISAのこども支援措置・投資商品入替措置などを要望
令和8年度税制改正要望—NISAの全世代化に向けた取組みが続く
2025年09月11日
-
道府県民税利子割への清算制度導入を提言
令和8年度税制改正での実現は不透明な情勢
2025年08月13日
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日