株式投資の実効税率の現状とあるべき姿

損益発生時の課税の非対称性の対処について

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2010年11月02日

サマリー

◆金融商品の種類によって課税区分が異なり、損益通算が行えないのであれば、利益が出たときにはそのまま課税される一方で、損失が出たときには損失分の税負担が軽減されないことになってしまう(以下、「課税の非対称性」と呼ぶ)。

◆課税の非対称性が存在すると、表面上の税率よりも投資家が負担する「実効税率」は高くなりうる。本稿では、課税の非対称性を考慮したわが国のこれまでの税制の実効税率の実績値および、2012年以降の金融所得課税一体化を想定した実効税率の理論値を求めた。

◆2012年以降、課税の非対称性が残ったまま、上場株式の配当・譲渡益に対する税率が20%になった場合の実効税率の理論値を求めると、(個人段階の)実効税率は41.66%となり、預貯金や債券の利子などと比べて過重な負担を求めることとなる。株式の表面税率を20%に引き上げるための条件としては、少なくとも幅広い損益通算、繰り越し・繰り戻し控除などを行い実効税率を上げないようにすることが求められる。

◆さらに、株式の配当・譲渡益課税については法人と個人の二重課税の問題もある。課税の非対称性の問題と合わせると、現行の10%税率も不合理であるとはいえないだろう。

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