2022年01月21日
サマリー
◆2021年8月に米国証券取引委員会(SEC)は、ブローカー・ディーラー(証券会社)と投資アドバイザーによるデジタル・エンゲージメント・プラクティス(以下DEP)の使用について、情報及びパブリックコメントの募集を実施した。
◆DEPとは、SECによると、「ウェブサイトやアプリケーションなどのデジタル・プラットフォームでの行動プロンプト、ディファレンシャル・マーケティング、ゲーム的機能(ゲーミフィケーション)、その他個人投資家の関心を引くように設計された要素や機能」とされる。
◆SECのゲンスラー委員長は、デジタル・プラットフォームの普及は、個人投資家の金融商品へのアクセスやその選択を拡大するという利点がある一方で、投資家がより頻繁に取引をすることや投資戦略を変更したりすることなどを促す可能性があると述べており、プラットフォームと投資家の間に潜在的な利益相反をもたらす可能性を懸念している。SECは、DEPの使用に関する情報や意見を市場関係者から収集し、既存の規制を評価するとともに、投資者保護などの観点から新たな規制が必要かにつき検討している。
◆証券会社などが提供するDEPを用いたオンラインアプリやゲーム機能は個人投資家、特に若年層が投資に関心を持ったり、実際に投資を始めたりするきっかけになっているとも言われており、投資家の裾野を広げる役割を果たしている面はある。一方で、人工知能、高度なアルゴリズム、ゲーム的機能を使用する一部のDEPには、個人投資家の投資目標やリスク許容度に一致しない取引を促したりする可能性があることも指摘されている。SECはこうしたDEPの利点と投資者保護とのバランスを如何に図っていくのか。今後のSECのコメント対応と規制やガイドライン等の策定の行方が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
開示府令の改正案が公表(2026年から一部適用)
有価証券報告書のサステナビリティ情報、人的資本、総会前開示に関する改正案
2025年12月10日
-
フィンフルエンサーの規制と取締りに関する海外動向
国境を越えた規制協力、フィンフルエンサー向け教育や認証制度の必要性
2025年11月19日
-
政策保有株式の縮減状況~2024年版~
保有銘柄数・保有額は前年比で2割程度の縮減
2025年11月11日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

