2021年12月06日
サマリー
◆金融機関は「顧客本位の業務運営に関する原則」(以下、「原則」)にかかる取組方針等を策定・公表しているが、それらの顧客による認知率・活用率は高くない。
◆金融庁「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査」の自由回答の結果をみると、取組方針等を認知していない顧客には、取組方針等を自身には関係のないものとして捉えている者や、金融機関と顧客の間には利益相反などがあるため「顧客本位の業務運営」の実現は困難だと考える者が一定数いることが確認された。この結果を踏まえると、「原則」にかかる取組方針等の認知率を向上させるためには、取組方針等の策定が顧客のためにあること、利益相反の適切な管理が可能でありそれを金融機関が実際に行っていることを、「原則」にかかる取組方針等を公表する自社のウェブページ以外の場でも積極的にアピールしていくことなどが考えられる。
◆各金融機関が取組みを改めて検討するとともに、その内容を顧客に分かりやすく情報発信するよう促すことを狙いに、金融庁は2021年9月より新たな様式で「金融事業者リスト」を公開した。新たな「金融事業者リスト」に掲載されるためには、取組方針等と原則2~7の対応関係等を明確に示していることが必要になるが、その要件を満たすことのできない金融機関は多かった。また、要件を満たしていたとしても原則と代わり映えしない文言が見受けられることなども課題として金融庁により指摘されていた。これらの課題を解決し、顧客にとって有益な情報を提供することが、「原則」にかかる取組方針等の活用率の向上には重要になると考えられる。
◆以上のような、金融機関が公表する「原則」にかかる取組方針等の認知率を向上させる取組み、活用率を向上させる取組みの2つを行っていくことが、「顧客本位の業務運営」のさらなる浸透・定着に向けて重要になるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
資産運用においてどのような顧客が利用金融機関を友人や知人に紹介するのか
2021年11月15日
-
顧客満足度を高める金融サービスとは
対面銀行・証券では商品購入後の適切なフォローアップがカギ
2021年08月11日
同じカテゴリの最新レポート
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
日米で共通する株主提案・議決権助言の課題
米国BRTが株主提案権と議決権行使助言業に関連する制度改正を提言
2025年05月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日