米国で急増するSPACと投資者保護への懸念

SECも複数のガイダンスを公表し、警戒

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サマリー

◆2020年の米国における新規株式公開(IPO)は記録的なブームとなり、とりわけ特別目的買収会社(SPAC)のIPOが急増しIPO全体の50%以上を占めた。2019年以前の過去10年間のSPACによる資金調達額・件数の合計を超える規模となり、引き続き2021年もSPACのIPOは急増している。

◆SPACは、IPOを通じて資金を調達し、その資金で後に非上場企業を合併することを目的としている。

◆SPACを通じて上場する被合併企業のメリットとしては、通常のIPOと異なり、被合併企業とSPACとの交渉で1株あたりの価格が決定されるため、確実性のある価格で公開できる点が挙げられる。また、SPACに投資する投資家のメリットとして、魅力的な合併対象企業を発掘・交渉し、合併後の企業価値向上を支援するSPAC経営者(スポンサー)の手腕に賭けることができる点が挙げられる。

◆一方、スポンサーが、一定期間内に合併を完了させるプレッシャーや報酬を得る動機から、投資家に不利な条件で合併を完了させるインセンティブを持つ可能性があるなど、スポンサーとSPAC株主の経済的利益が異なり、利益相反の可能性があることも指摘される。

◆SPACの増大に伴いSECも警戒を強めており、今後は投資者保護の観点から開示等を含めた規制強化も検討される可能性があるだろう。

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