リサーチ費用のアンバンドリング、日本への影響

【MiFIDⅡ】「リサーチ」の定義とコーポレート・アクセスの扱い

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サマリー

◆2018年1月3日からEUではMiFIDⅡが施行される。MiFIDⅡが規定する「投資者保護の強化」の一環として、投資会社に執行費用とリサーチ費用のアンバンドリング(分離明確化)を要求しており、この施行が欧州の大きな関心事となっている。


◆MiFIDⅡでは、投資会社が投資一任サービスを提供する場合等に、第三者からあらゆるフィー、コミッション、金銭的利益・非金銭的利益を受領することを原則禁止している。MiFIDⅡ施行後のリサーチ費用の扱いは、2017年3月に公表された欧州委員会の指令(以下、EC指令)等により明確化された。すなわち、投資会社がリサーチを有償で購入できるのは①投資会社の自己負担、または②RPA(research payment account)を通じた購入に限られる。投資会社が無償でリサーチを受領できるのは、③MNMB(minor non-monetary benefits)と認められる場合に限られる。


◆コーポレート・アクセス(投資家と発行体の経営陣が対話する機会の提供)をリサーチに含むか否かはEC指令では断定しておらず、各国で対応が分かれている。英国は、コーポレート・アクセスはリサーチに含まないと明記した。他方、フランスは、知的付加価値の高いミーティングについては「リサーチ」に該当し、RPAからの支払いも認められるとした。


◆英国を中心とした欧州では、従前よりリサーチ費用のアンバンドリングが進められており、投資会社によるリサーチについての選別意識が強まってきている。MiFIDⅡにより、この動きがさらに加速し、セルサイドのアナリスト数やカバレッジが減少する一方で、投資会社のインハウス・リサーチや独立の(ブローカー業務を行わない)リサーチ・プロバイダーが増加することも予想される。


◆MiFIDⅡはEUを拠点とする投資会社・ブローカーを対象とする規制であることから、日本企業が直接の規制対象となることは少ない。しかし、日本の証券会社であっても、EU域内にある投資会社とのビジネスを行う上で、リサーチ費用と執行費用を分離した手数料体系を提示するよう求められることも想定される。


◆EU域内の投資会社が日本の証券会社から「コーポレート・アクセス」の提供を受けることにも制約が生じる可能性がある。MiFIDⅡの施行は、日本の上場企業にとっても、IR活動や情報発信のあり方を見直す機会になり得るだろう。

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