2017年06月09日
サマリー
◆2016年4月21日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、最終文書「銀行勘定の金利リスク」(最終文書)を公表している。
◆最終文書は、バーゼル規制における銀行勘定の金利リスク(IRRBB: Interest Rate Risk in the Banking Book)の取扱いを見直すものである。
◆最終文書は、IRRBBの取扱いについて、「第一の柱」で資本賦課の対象とする案(1柱案)ではなく、現行のアウトライヤー規制(2004年ガイドライン)を強化する案(2柱案)を採用している。
◆最終文書は、内部モデルの当局承認は求めていない。また、内部モデルの内容そのものも問うていない。それは銀行側に裁量を委ねている。問うのは、内部モデルのガバナンス(内部監査やストレステストを含む)である。もっとも、内部モデルを採用する場合でも、一定の仕様が定められている。それは、経済価値ベース・期間収益ベースの双方で計測することと、金利ショックシナリオ(及びストレスシナリオ)の指定である
◆アウトライヤー銀行と特定されるアウトライヤー比率の基準値(アウトライヤー基準値)は、2004年ガイドラインの「自己資本(Tier 1+Tier 2)の20%」から「Tier 1の15%」に厳格化されている。もっとも、最終文書では、各国の監督当局に追加的な基準の設定を認めている。追加的な基準の一例としては、「資本バッファーと金利リスク量の対比」を挙げている。
◆最終文書で重要なポイントの一つに、コア預金の平均満期と最長満期の両方の開示が求められる点が挙げられる。これにより、銀行ごとのコア預金の取扱いの特徴が分かりやすくなる仕組みとなっている。
◆最終文書は、2018年から適用される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

