2013年09月26日
サマリー
◆2013年9月2日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)と証券監督者国際機構(IOSCO)は、「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制」の最終枠組みを公表している。
◆最終枠組みは、2012年7月及び2013年2月に公表された二つの市中協議文書に寄せられたコメントの慎重な検討及び定量的影響度調査(QIS)の結果を踏まえ、政策的枠組みの最終案を示したものである。
◆そして、最終枠組みは、G20の要請を踏まえ、システミック・リスクの低減及び中央清算の促進を目的として、中央清算されないデリバティブ取引について一定の証拠金(当初証拠金及び変動証拠金)の授受を求めることを提案したものである。
◆2013年2月に公表された第二次市中協議文書からの主な変更点としては、①現物決済型の外為フォワード・スワップを当初証拠金に係る規制の適用から除外すること、②通貨スワップの元本交換に付随する現物決済型の外為取引も同様に当初証拠金に係る規制の適用から除外すること、③対顧客ポジションのヘッジ目的である等の厳格な要件の下で、当初証拠金の「一度限り」の再担保が許容されること、の3点が挙げられている。
◆これらは、いずれも第二次市中協議文書からの緩和と言えるものであり、市場参加者にとっては歓迎すべきものであろう。
◆もっとも、これらの緩和をもってしても、最終枠組みが提案する証拠金規制(特に当初証拠金)が過去に例を見ない規制枠組みであることには変わりなく、対象主体となるOTCデリバティブの取引主体にとっては追加コストの発生が見込まれる。
◆したがって、対象主体にとっては、最終枠組みの実施が開始されるまでにOTCデリバティブのポートフォリオの再編成(リストラクチャリング)を検討することが今後の課題となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
非清算店頭デリバティブ取引の証拠金規制
-
デリバティブ証拠金規制の導入、9ヶ月延期
【BCBS/IOSCO】2016年9月に延期、変動証拠金に6ヶ月の移行措置
2015年03月25日
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日