2013年03月18日
サマリー
◆2013年1月7日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、バーゼルⅢの流動性規制、流動性カバレッジ比率(LCR)の改訂版(改訂テキスト)を公表している。
◆LCRとは、「適格流動資産」を「30日間のストレス期間に必要となる流動性」で除することによって得た割合を指す。BCBSは、2010年12月に公表した「バーゼルⅢ」にて、新たにLCRをバーゼル規制(国際的な銀行の自己資本比率規制に関するガイドライン)に加えている。
◆改訂テキストは、2010年12月公表のLCRテキスト(ドラフト)のアップデート版であり、一部の要件の緩和や明確化が施されている。
◆ドラフトからの主な変更点は、①適格流動資産の範囲の拡大(信用格付BBB-以上の非金融社債、株式指数構成銘柄である非金融法人の上場株式、信用格付AA-以上のRMBSを新たに算入)、②一定の資金流出項目の掛け目の緩和(例えば、事業法人等からの無担保ホールセール調達の流出率を、従来の75%から40%に緩和)、③2015年から2019年の段階的実施の導入(従来は2015年から完全実施)、の3点である。
◆今回の改訂の目玉は、RMBSを適格流動資産に組み入れることの許容だろう。これを「証券化商品の帰還」と表現できるかもしれない。しかし、報道によると、米国にて発行されているRMBSの多くは、今回の改訂の恩恵を受けることができないという。
◆というのは、改訂テキストは、適格流動資産に組み入れることができるRMBSを、完全償還請求権付(フル・リコース)のものに限定しているが、米国のRMBSの多くはこの要件を満たさないためである。こうしたフル・リコース要件は、欧州の多くの国におけるRMBSをも適格流動資産から除外することになるという。
◆BCBS加盟国が改訂テキストを自国の法規に落とし込む際に、こうしたフル・リコース要件をそのまま受け入れるか否かについては、注視する必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日