2012年06月07日
サマリー
◆5月3日、バーゼル銀行監督委員会が、バーゼル規制(国際的な銀行の自己資本規制)に関して、トレーディング業務の扱いを強化する内容の市中協議案を公表した。9月7日までコメントが受け付けられている。
◆本市中協議案で最も注目される見直し案は、トレーディング業務に関するリスクを測定する指標として、現行規制の内部モデル方式で認められているVaRを廃止し、「期待ショートフォール」という指標に変更することである。これは、VaRでは、金融危機のような発生する確率が低い事象(テイル・リスク)が捕捉されないため、そのような事象をより適切に捕捉できる「期待ショートフォール」に変更するものである。この見直し案が実現すれば、トレーディング業務に関連する資本賦課額が大きく増加する可能性がある。
◆また、現行規制は、ある商品を銀行勘定に計上するかトレーディング勘定に計上するかは銀行の意図によって決定されるため、より資本賦課額が小さい勘定に計上しようとするインセンティブが働くという問題がある。そこで、市中協議案は、トレーディング勘定と銀行勘定を区別する境界のあり方を見直すことを提案している。見直し案の一つとして、公正価値評価の対象となる金融商品(現段階では「その他有価証券」を含む模様)はトレーディング勘定に計上する案が提案されており、この案ではトレーディング勘定の範囲が拡大することとなる。
◆他には、内部モデル方式の枠組みの見直し案(内部モデルを承認する単位を、銀行ごとではなく、銀行のトレーディング・デスクごとに細分化)や、標準的方式の枠組みの見直し案や、両方式の水準設定を整合的にすることなどにより両方式の関係を強化する案も提案されている。
◆なお、今回の見直し案は銀行に与える影響が大きく、合意まである程度の時間がかかると予想され、今回の見直し内容が合意されて実際に適用されるのは、数年後になるのではないかと推測される。
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